恋する詩神 84
― スロウレイン 12 ―
著:葉邑桐也
「レクチャーねえ…… 途中で止まれなくなっても知らねえぞ」
そう悪戯っぽく笑った飛田はカウンターへ近づきバーテンの顔色を覗き込む。
「悪い、部屋空いてるか? 」
バーテンは空いてますよどうぞ、と一本の鍵を飛田に手渡す、そしてソレを受け取った飛田に誘われて旭は店の奥、所謂プレイルームへと足を踏み入れていった。
中へ入ると、飛田は旭に背を向けたままスルッとTシャツを脱いだ、背中の昇り龍が目に入る、その美しさに思わず見惚れた。
飛田の逞しい背中に絡みつくように配置された図柄の美しさに心魅かれる、まるで此方を喰ってしまいそうな迫力のある龍の目に睨まれて、被虐心を煽られる。
「…… 」
旭は呆然としながら左手で自分の心臓の上辺りに触れた、ソコにはいつか隆史が蠍の文様を描いてくれたコトがあった、十日ほどで消えてしまったが、アノ時、自分が自分でなくなったような気がして血が滾った、その時の気分を思い出しドキドキしてくる。
飛田はそんな旭の様子を見ながらクイッと指先で招く、無言の圧力で旭は飛田の隣、ラブソファの横へ座った。
「で? あれから少しは進歩したのかよ、」
「……何が? 」
「男を気持ちよくさせるやり方を覚えたのかって聞いてんだ、」
「…… 」
「わかんねえのか? まあいい、お前がされて気持ちいいと感じたコトをやってみりゃいいだろ、」
「…… 」
そう突き放され、旭はなんとも言いようのない情けない表情で飛田を見た。
そして、ジロリと睨み返す飛田の鋭い視線を避けるように、旭は俯き加減で視線を落とし黙り込んでしまった。
飛田は大きな溜息をついてから、煙草に火を点け一息吸い込み、思いっきり胡散臭そうな目つきで完全に馬鹿にしているだろう視線を旭へ向ける。
「お前な、いつも待ってるだけなのか? 一度もテメエから彼氏になんかしてやったコトはねえのかよ、」
「なぃ…… かも」
「ないかもじゃねえ! いいか、セックスってのはされるもんじゃねえぞ、するもんだ! お互いに奪い合って与え合うモンだ、何も仕掛けてこねえ相手なんざダッチワイフと同じじゃねえか!! 」
いい加減イラついた声で怒鳴るようにそう言った飛田を困り果てた目で見た旭は、申し訳なさそうに上目遣いの視線をむける。
「ごめんなさい、ってか、その前に…… 」
「あん? 」
「だっちわいふってなに? 」
「…… 」
今度は飛田の黙り込む番だった、まさかソコから教えてやらにゃあならねえのか? 情けなくて溜息も出ねえとはこの事だ、こりゃ坊主のほうに同情したくなってきたぞ…… 。
いつまで経っても全然進歩のない恋人を持った男はどんな気分なんだろうか? といきなり圭への同情的心情に傾いてしまった。
だがそれでは埒があかないし、旭の望みは自分から攻められる男になるコトなんだ、面倒だが教えてやると約束してしまったので仕方がない。
「お前、津田との一件のとき、俺が浚ってきた小僧を助けに来てたんだよな? 」
「うん、」(勇樹くんのコトだ)
「津田の話しじゃお前はソイツを好きだってコトだったが…… 」
「うん、好き…… だった」
「アイツは確かまだ十五かせいぜい十六ってトコだろ? 」
「十七だよ」
何を聞かれているのか全然わかっていない旭ののんびりした声に飛田はまた苛ついてきたが、ここは忍耐だ、指を差して怒鳴りかけた口を閉ざし一度息を飲んで気を落ち着ける。
ここで怒鳴ると、旭は萎縮してしまってもうなにも出来なくなってしまうだろう、絶対泣いちまう…… 。
あの小僧(圭)意外に大物だ、よく平気でこんな奴(旭)、相手にしてられるな、その忍耐力には頭が下がるぜ。
飛田は変なところで関心しながらゆっくりと続きを話した。
「ドッチでもいい、とにかく! まさかソイツにも受身だったワケじゃあるまい? 行く気はあったんだろ? 」
「そりゃ、あの子に関しては俺だって少しはそういう気があったよ、……ってか、ちょっと泣かせちゃったコトもあるし…… 」
「泣かした? どうやって? 」
勇樹の話題をふった途端に少し顔つきが変わった旭に興味をもって飛田が突っ込むと旭はぼんやりと上の方を見つめながら答えた。
「ダメだってさ、先に言われてたのに、我慢できなくてキスしちゃったら、泣かれちゃって…… でも止められなくって、もっと泣かせたいって思って…… でも結局それ以上は出来なかったけどね、」
「んだよ! そこで終りか、しょうがねえな」
「だって! 外だったし、あの子に彼氏がいるのも知ってたから、なんも出来ないじゃん、それ以上、」
すると飛田は、自分の隣で畏まってちょこんと座っている旭の、意外にムッとした声での反論に、興味をそそられたらしい。
その肩を片手で抱き、今度は少し声を落してゆっくりと唆すように話した。
「じゃあ考えろ、いいか? もしもソコが室内、そうさなお前の部屋で場所はベッドルームだ、周りには誰もいない、朝まで誰にも邪魔されない、……としたら、どうする? 」
「どう…… 」
そう言われた旭は、勇樹のピンク色した甘い唇、そして触れると指先に吸い付いてきそうなくらい肌理細かい柔らかなの白い肌を思い出していった。
最初に会った時は仕事場だったからスーツなんか着ちゃってて生意気そうな感じに見えたのに、話してみたら全然違ってて、凄く繊細で、俺の歌いたいコトの核心を鋭く感じとってくれていて、細部にわたっていろいろ話してくれた。
誰に対しても真剣に全身全霊をかけて対する勇樹くんの周りにはどうやら沢山の信奉者がいるようで、友人はみんな年上ばっかりだって、だからいつも皆にガキ扱いされるのが癪の種だと口を尖らせて話すのが可愛くて、初めて抱きしめたいと思ったんだ。
「キス…… したい」
「おう、いいね、でキスして? そのあとどうする? 」
「ソノアト…… ? 」
すぐ自分の世界に入り込んでしまうのは旭のアーチスト性の高さを示すモノでもあるのだが、どうやら旭はもうここがドコかも忘れたように妄想に入り込んでいったようだった。
甘やかな唇を奪って、あの子はすぐ泣いちゃうからその涙を舐めてやって、柔らかな頬にキスして細い喉元にキスして、首すじ、そして肩…… ああ、その肩口に…… 。
「噛み付いてみたい…… 」
夢見るようにそう呟いた旭に、飛田も少し驚いた、噛み付く? そりゃまたずいぶんマニアックだなと言ってやりたかったが、そこで妄想を止めるのもなんなので黙って聞いていた。
あの子の肌はしっとりしてて柔らかいから、きっとすぐ血がでる、そしたらその血も舐める、あの子の血ならきっと甘いだろう…… 。
そしてたぶん嫌がるだろうけど、そのままシャツを脱がせて、出来立てのマシュマロみたいな身体全部…… 舐めてみたい。
砂糖菓子みたいな子だから、きっとドコもかしこも甘いに違いないんだ。
噛み付いて、舐めて、あの子の身体一面くまなく俺の歯型をつけてまわる、そしてそれから…… 。
「ちょっ、待て、ストップ! 」
「え? 」
そこで飛田は、いきなり妄想を中断させられて途惑った旭の耳元に低く甘苦い声で囁いた。
「その相手、そのまま坊主、……いや、尾崎圭に入れ替えてみな」
「けい…… くん? 」
どうも騙されやすいというか、暗示にかかりやすい性質らしい旭は、飛田の言葉に従って、そのままその妄想の相手を圭に入れ替えていったらしい。
不埒な表情でニヤッと笑った。
「ケッ笑いやがったな、……なんだ出来そうじゃねえかよ、」
「そう、かな…… ? 」
「あとは実技だな」
「実技…… それ、自信ないんだけど」
「だから、それは今から教えてやる、来な、」
「ここで? ベッドじゃないの? 」
「アホ! んなトコでやってたらコッチだって止まれなくなんだろうが! 」
「そっか…… うん」
止まらなくてもいいのに…… かすかにそんな呟きが聞こえたのは気のせいだという事にしておこう。
そう自分に言い聞かせ、咳払いをしてから飛田の右手は旭の顎を捕らえた。
「じゃ、まずはキスのしかたから…… 」
「……はい」
NEXT. BACK.
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著:葉邑桐也
「レクチャーねえ…… 途中で止まれなくなっても知らねえぞ」
そう悪戯っぽく笑った飛田はカウンターへ近づきバーテンの顔色を覗き込む。
「悪い、部屋空いてるか? 」
バーテンは空いてますよどうぞ、と一本の鍵を飛田に手渡す、そしてソレを受け取った飛田に誘われて旭は店の奥、所謂プレイルームへと足を踏み入れていった。
中へ入ると、飛田は旭に背を向けたままスルッとTシャツを脱いだ、背中の昇り龍が目に入る、その美しさに思わず見惚れた。
飛田の逞しい背中に絡みつくように配置された図柄の美しさに心魅かれる、まるで此方を喰ってしまいそうな迫力のある龍の目に睨まれて、被虐心を煽られる。
「…… 」
旭は呆然としながら左手で自分の心臓の上辺りに触れた、ソコにはいつか隆史が蠍の文様を描いてくれたコトがあった、十日ほどで消えてしまったが、アノ時、自分が自分でなくなったような気がして血が滾った、その時の気分を思い出しドキドキしてくる。
飛田はそんな旭の様子を見ながらクイッと指先で招く、無言の圧力で旭は飛田の隣、ラブソファの横へ座った。
「で? あれから少しは進歩したのかよ、」
「……何が? 」
「男を気持ちよくさせるやり方を覚えたのかって聞いてんだ、」
「…… 」
「わかんねえのか? まあいい、お前がされて気持ちいいと感じたコトをやってみりゃいいだろ、」
「…… 」
そう突き放され、旭はなんとも言いようのない情けない表情で飛田を見た。
そして、ジロリと睨み返す飛田の鋭い視線を避けるように、旭は俯き加減で視線を落とし黙り込んでしまった。
飛田は大きな溜息をついてから、煙草に火を点け一息吸い込み、思いっきり胡散臭そうな目つきで完全に馬鹿にしているだろう視線を旭へ向ける。
「お前な、いつも待ってるだけなのか? 一度もテメエから彼氏になんかしてやったコトはねえのかよ、」
「なぃ…… かも」
「ないかもじゃねえ! いいか、セックスってのはされるもんじゃねえぞ、するもんだ! お互いに奪い合って与え合うモンだ、何も仕掛けてこねえ相手なんざダッチワイフと同じじゃねえか!! 」
いい加減イラついた声で怒鳴るようにそう言った飛田を困り果てた目で見た旭は、申し訳なさそうに上目遣いの視線をむける。
「ごめんなさい、ってか、その前に…… 」
「あん? 」
「だっちわいふってなに? 」
「…… 」
今度は飛田の黙り込む番だった、まさかソコから教えてやらにゃあならねえのか? 情けなくて溜息も出ねえとはこの事だ、こりゃ坊主のほうに同情したくなってきたぞ…… 。
いつまで経っても全然進歩のない恋人を持った男はどんな気分なんだろうか? といきなり圭への同情的心情に傾いてしまった。
だがそれでは埒があかないし、旭の望みは自分から攻められる男になるコトなんだ、面倒だが教えてやると約束してしまったので仕方がない。
「お前、津田との一件のとき、俺が浚ってきた小僧を助けに来てたんだよな? 」
「うん、」(勇樹くんのコトだ)
「津田の話しじゃお前はソイツを好きだってコトだったが…… 」
「うん、好き…… だった」
「アイツは確かまだ十五かせいぜい十六ってトコだろ? 」
「十七だよ」
何を聞かれているのか全然わかっていない旭ののんびりした声に飛田はまた苛ついてきたが、ここは忍耐だ、指を差して怒鳴りかけた口を閉ざし一度息を飲んで気を落ち着ける。
ここで怒鳴ると、旭は萎縮してしまってもうなにも出来なくなってしまうだろう、絶対泣いちまう…… 。
あの小僧(圭)意外に大物だ、よく平気でこんな奴(旭)、相手にしてられるな、その忍耐力には頭が下がるぜ。
飛田は変なところで関心しながらゆっくりと続きを話した。
「ドッチでもいい、とにかく! まさかソイツにも受身だったワケじゃあるまい? 行く気はあったんだろ? 」
「そりゃ、あの子に関しては俺だって少しはそういう気があったよ、……ってか、ちょっと泣かせちゃったコトもあるし…… 」
「泣かした? どうやって? 」
勇樹の話題をふった途端に少し顔つきが変わった旭に興味をもって飛田が突っ込むと旭はぼんやりと上の方を見つめながら答えた。
「ダメだってさ、先に言われてたのに、我慢できなくてキスしちゃったら、泣かれちゃって…… でも止められなくって、もっと泣かせたいって思って…… でも結局それ以上は出来なかったけどね、」
「んだよ! そこで終りか、しょうがねえな」
「だって! 外だったし、あの子に彼氏がいるのも知ってたから、なんも出来ないじゃん、それ以上、」
すると飛田は、自分の隣で畏まってちょこんと座っている旭の、意外にムッとした声での反論に、興味をそそられたらしい。
その肩を片手で抱き、今度は少し声を落してゆっくりと唆すように話した。
「じゃあ考えろ、いいか? もしもソコが室内、そうさなお前の部屋で場所はベッドルームだ、周りには誰もいない、朝まで誰にも邪魔されない、……としたら、どうする? 」
「どう…… 」
そう言われた旭は、勇樹のピンク色した甘い唇、そして触れると指先に吸い付いてきそうなくらい肌理細かい柔らかなの白い肌を思い出していった。
最初に会った時は仕事場だったからスーツなんか着ちゃってて生意気そうな感じに見えたのに、話してみたら全然違ってて、凄く繊細で、俺の歌いたいコトの核心を鋭く感じとってくれていて、細部にわたっていろいろ話してくれた。
誰に対しても真剣に全身全霊をかけて対する勇樹くんの周りにはどうやら沢山の信奉者がいるようで、友人はみんな年上ばっかりだって、だからいつも皆にガキ扱いされるのが癪の種だと口を尖らせて話すのが可愛くて、初めて抱きしめたいと思ったんだ。
「キス…… したい」
「おう、いいね、でキスして? そのあとどうする? 」
「ソノアト…… ? 」
すぐ自分の世界に入り込んでしまうのは旭のアーチスト性の高さを示すモノでもあるのだが、どうやら旭はもうここがドコかも忘れたように妄想に入り込んでいったようだった。
甘やかな唇を奪って、あの子はすぐ泣いちゃうからその涙を舐めてやって、柔らかな頬にキスして細い喉元にキスして、首すじ、そして肩…… ああ、その肩口に…… 。
「噛み付いてみたい…… 」
夢見るようにそう呟いた旭に、飛田も少し驚いた、噛み付く? そりゃまたずいぶんマニアックだなと言ってやりたかったが、そこで妄想を止めるのもなんなので黙って聞いていた。
あの子の肌はしっとりしてて柔らかいから、きっとすぐ血がでる、そしたらその血も舐める、あの子の血ならきっと甘いだろう…… 。
そしてたぶん嫌がるだろうけど、そのままシャツを脱がせて、出来立てのマシュマロみたいな身体全部…… 舐めてみたい。
砂糖菓子みたいな子だから、きっとドコもかしこも甘いに違いないんだ。
噛み付いて、舐めて、あの子の身体一面くまなく俺の歯型をつけてまわる、そしてそれから…… 。
「ちょっ、待て、ストップ! 」
「え? 」
そこで飛田は、いきなり妄想を中断させられて途惑った旭の耳元に低く甘苦い声で囁いた。
「その相手、そのまま坊主、……いや、尾崎圭に入れ替えてみな」
「けい…… くん? 」
どうも騙されやすいというか、暗示にかかりやすい性質らしい旭は、飛田の言葉に従って、そのままその妄想の相手を圭に入れ替えていったらしい。
不埒な表情でニヤッと笑った。
「ケッ笑いやがったな、……なんだ出来そうじゃねえかよ、」
「そう、かな…… ? 」
「あとは実技だな」
「実技…… それ、自信ないんだけど」
「だから、それは今から教えてやる、来な、」
「ここで? ベッドじゃないの? 」
「アホ! んなトコでやってたらコッチだって止まれなくなんだろうが! 」
「そっか…… うん」
止まらなくてもいいのに…… かすかにそんな呟きが聞こえたのは気のせいだという事にしておこう。
そう自分に言い聞かせ、咳払いをしてから飛田の右手は旭の顎を捕らえた。
「じゃ、まずはキスのしかたから…… 」
「……はい」
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恋する詩神 83
― スロウレイン 11 ―
著:アキト
「へぇ、あの関西坊主にそんな相手がいたとはねぇ・・・」
旭から事情を聞いた飛田は意地悪そうな笑みを浮かべ、煙草に一本、火を点けた。
それを指の間にはさみ肘をテーブルにつく。
旭は飛田側にある煙草の箱に視線を落とした。
明らかに国産ではない、赤と黒の正方形の箱。
(ダビドフ・・・マグナム? )
旭がそこに書かれた文字を読み取っていると、飛田が顔を背け、ゆっくりと煙を吐き出した。
「そんで、おまえはワザワザ恋敵にナイト様を送り出してやっちまったのかよ、馬鹿なヤツだな」
「だって!」
「だってじゃねぇよ」
咄嗟に視線を上げて反論しようとしたところを、即座に諫められる。
「賭けてもいいぜ。今頃奴等はベッドインだ、後悔先に立たずってやつだな」
「そんなコトないよ! 圭くんはそんなコト・・・」
「しないと思うのか?」
思いがけず真剣に問い詰められ、旭は言葉を失った。
圭に限ってそんなことはないと信じたい。
けれども、相手はその辺のファンなどではなく、風祭蒼太だ。
圭にとって彼が特別で大切な人であるというコトには違いないだろう。それくらいは自分にもわかる。
過去にどういう関係だったのかはあえて聞くことなどなかったが、圭を見ているとわかる。
蒼太は圭の・・・
「・・・で、」
飛田がグラスを呷り、テーブルに置いた音で思考が止まった。
吸いかけていた煙草が、まだ随分残っているにも関わらず、惜しげもなく灰皿に押しつけられる。
「どうするんだ?」
「どうするって・・・」
「そいつの好きにさせててもいいのかって話だ。おまえ、関西坊主がそいつになびいちまってもいいのかよ」
「それは・・・よくない」
「おまえはなぁ、もっとガンガン攻め込まねぇといけねぇよ。いつまでも受け身でいたら飽きられちまうぜ」
「飽きる? 圭くんが俺に?」
そんなこと、考えもしなかった。
これまで呆れられたことはあっても、飽きられるなんてこと想像したこともなかった。
そういえば「男らしさ」に憧れを抱きつつも圭との情事はいつも受け身であるような気がする。
圭のリードに甘えているのは確かだ。
でも圭は?
圭は蒼太が相手であったなら恐らく受け身だ。
(蒼太が相手だったら・・・)
そう考えると無性に苛立った。
圭が自分ではない別の人間とセックスをしているシーンなど、想像するだけでも吐き気がする。
「圭くんも、俺に何かあるといつもこんな気持ちになってるのかな・・・」
飛田に聞かせるでもなく、旭はそう呟いた。
「で、どうするんだ? 俺でよければ手を貸すぜ」
旭の中で結論が出たことを悟ったように、飛田は立ち上がり、旭に手を差し伸べた。
旭はそれを見上げ、真剣な眼差しで飛田を見つめる。
「今夜は圭くんを信じる。だから会いに行かないし、電話もしない。そのかわり・・・」
飛田の手を取って立ち上がると、旭はにっこりと笑って見せた。
「飛田さん、手を貸してくれる?」
飛田が了承したことを声に出す代わりに肩を上げる。すると旭は飛田の腕にしがみついて、耳元で囁いた。
「俺に、攻め方をレクチャーして欲しいんだけど?」
NEXT. BACK.
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著:アキト
「へぇ、あの関西坊主にそんな相手がいたとはねぇ・・・」
旭から事情を聞いた飛田は意地悪そうな笑みを浮かべ、煙草に一本、火を点けた。
それを指の間にはさみ肘をテーブルにつく。
旭は飛田側にある煙草の箱に視線を落とした。
明らかに国産ではない、赤と黒の正方形の箱。
(ダビドフ・・・マグナム? )
旭がそこに書かれた文字を読み取っていると、飛田が顔を背け、ゆっくりと煙を吐き出した。
「そんで、おまえはワザワザ恋敵にナイト様を送り出してやっちまったのかよ、馬鹿なヤツだな」
「だって!」
「だってじゃねぇよ」
咄嗟に視線を上げて反論しようとしたところを、即座に諫められる。
「賭けてもいいぜ。今頃奴等はベッドインだ、後悔先に立たずってやつだな」
「そんなコトないよ! 圭くんはそんなコト・・・」
「しないと思うのか?」
思いがけず真剣に問い詰められ、旭は言葉を失った。
圭に限ってそんなことはないと信じたい。
けれども、相手はその辺のファンなどではなく、風祭蒼太だ。
圭にとって彼が特別で大切な人であるというコトには違いないだろう。それくらいは自分にもわかる。
過去にどういう関係だったのかはあえて聞くことなどなかったが、圭を見ているとわかる。
蒼太は圭の・・・
「・・・で、」
飛田がグラスを呷り、テーブルに置いた音で思考が止まった。
吸いかけていた煙草が、まだ随分残っているにも関わらず、惜しげもなく灰皿に押しつけられる。
「どうするんだ?」
「どうするって・・・」
「そいつの好きにさせててもいいのかって話だ。おまえ、関西坊主がそいつになびいちまってもいいのかよ」
「それは・・・よくない」
「おまえはなぁ、もっとガンガン攻め込まねぇといけねぇよ。いつまでも受け身でいたら飽きられちまうぜ」
「飽きる? 圭くんが俺に?」
そんなこと、考えもしなかった。
これまで呆れられたことはあっても、飽きられるなんてこと想像したこともなかった。
そういえば「男らしさ」に憧れを抱きつつも圭との情事はいつも受け身であるような気がする。
圭のリードに甘えているのは確かだ。
でも圭は?
圭は蒼太が相手であったなら恐らく受け身だ。
(蒼太が相手だったら・・・)
そう考えると無性に苛立った。
圭が自分ではない別の人間とセックスをしているシーンなど、想像するだけでも吐き気がする。
「圭くんも、俺に何かあるといつもこんな気持ちになってるのかな・・・」
飛田に聞かせるでもなく、旭はそう呟いた。
「で、どうするんだ? 俺でよければ手を貸すぜ」
旭の中で結論が出たことを悟ったように、飛田は立ち上がり、旭に手を差し伸べた。
旭はそれを見上げ、真剣な眼差しで飛田を見つめる。
「今夜は圭くんを信じる。だから会いに行かないし、電話もしない。そのかわり・・・」
飛田の手を取って立ち上がると、旭はにっこりと笑って見せた。
「飛田さん、手を貸してくれる?」
飛田が了承したことを声に出す代わりに肩を上げる。すると旭は飛田の腕にしがみついて、耳元で囁いた。
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+咎人の恋+ 9
― 太陽の恋 5 ―
唇を離した後、一瞬俯いた蓮は、眩しそうな潤んだ目をして薙を見上げていた。
そして二人で笑いあった後、何事もなかったかのように、来週末何をして遊ぶとか、その前に期末があんじゃねえかよと、他愛無い話をしはじめた。
その時の口づけを蓮がどういう意味にとったのか、それは本当にはわからなかったし、薙自身、自分が何故そんなコトをしたのか、今一つわからずにいたが、それからも二人の関係は変わらないものと信じていた。
共に遊び、共に学び、時には学校をサボって無駄にダベって、何をするにも蓮と一緒だった。
蓮と過ごした青春時代は薙の半生の宝だったのだ。
しかし、薙にはもう一つの宝があった、幼馴染であり性別を越えた友情を持ち続けてくれた由佳里だ。
薙は小学生の頃から体格が大きく、クラスメイト同士で何か小競り合いあっても、いつも悪いのは薙のほうだと疑われていた。
デカくて怖い顔をしている、ただそれだけで敬遠されがちだった薙を、小さな頃からずっと疑う事なく信じ続けてくれた由佳里がいたからこそ、薙は曲がらずにすんだのかもしれない。
蓮と由佳里、この二人は薙にとって大事な宝だったのだ。
だが、宝は一つだからこそ宝なのだ、二つを保とうとすればどちらかが壊れる。
その亀裂はまだ目には見えていなかったが、深く静かに進行していた。
「高塔くんってまるで薙の恋人みたいね、」
ある日、薙の家に遊びに来ていた由佳里が、そう呟いた。
薙は机の上に、蓮と由佳里の二人が一緒に映っている写真を綺麗な木製の写真立に入れて飾っていた。
本当は由佳里の写真を飾るつもりだった、でも由佳里一人が映っている写真はなくて、飾りたいから撮らせてくれと言うのもなにか気恥ずかしい。
それに、そんなコトをするとまるで自分が由佳里のことを好きみたいにみえるじゃないか、いや、事実好きではあるがあくまでそれは友達としてだ。
そう自分に言い聞かせるほど、薙にとって由佳里の存在が大きく感じられてきていた。
だから、あえてその感情に蓋をしようと蓮と一緒の写真を選んだのだ。
なかなかいいのがなくて、心なしか蓮のほうがメインになっている写真になった、その写真の蓮が、とても綺麗でイイ男に映っていたのは少し癪だが、別にソレはそれでかまわないと思っていた。
薙にとっては蓮も、何モノにも変えがたい大事な人間だったからだ。
由佳里は、その写真をシミジミと見てそう言ったのだ。
「なに? なんでだよ、よせよアイツ男だぜ? 」
薙がなぜか少し後ろめたい気分に陥りながら慌ててそう答えると、由佳里は悪戯っぽく笑いながら薙のひたいを小突いた。
「わかってるわよそんなの、……でももし、高塔くんが女の子だったら私、負けちゃうなぁって思ったの」
高塔が女だったら?
薙はその言葉に少し心が震えるのを感じていた。
ありえない、もしも高塔が女だったら、そもそも自分は高塔に興味なんか持たなかっただろう、もったとしても声なんかかけなかったと思う。
……いや、違う、もしも高塔が女だったとしても、きっと同じように心魅かれたに違いない。
そしてもしかしたら由佳里の言うとおり……? 薙はそう思いながらもありえない事だと、その考えを否定した。
「バカ、そんな事アイツの前で言ってみろ、怒るぜ、きっと」
本当にありえない。
蓮は誰よりも強く潔い男なのだ。
「だってなんか薙って高塔くんが心配で仕方ないって感じに見えちゃって…… 高塔くんが美人で薙がそんなだからかな? 最近、二人の事を蔭で、美女と野獣って言ってる人がいるの知ってる? 薙って高塔くんの騎士みたいなんだもの」
美女(蓮のことだろ?)と野獣(俺か?!)……?
薙は眩暈のようなショックを受けながらその話を聞いていた。
そりゃあ確かに高塔は父親がヤクザであると言う特殊な事情もあって、いつも一人でいて寂しそうにみえたし、もちろん女ではないが美人だし、何となく庇護欲をかきたてられたのも事実だったが。
だがそれでイコール二人が妖しいと言われるのは腑に落ちない、というより嫌だと思った。
だが、口を尖らせて拗ねたように言った由佳里に反論しようと思いながらも、薙の目は自然に、由佳里の手にしていた写真へと移った。
写真の中の蓮は少し首をかしげ、楽しそうに笑っていた。
それは最初、他の男、須崎といる時に見かけ、魅せられた、屈託なく笑う子犬のような笑顔。
また見たいと思わせた笑顔。
自分の隣で笑っていて欲しいと願ったとびきりの笑顔だった。
自分は蓮をなんと思っているのだろう…… ?
フト頭を擡げた突き刺さるような疑問を深く掘り下げようとしたその時、黙ったままの薙の様子に、怒らせたと感じたのかもしれない、由佳里の涙声が聞こえた。
「ゴメン、なんかあんまり二人が仲いいから…… ヤダな私、少し妬いちゃったかな」
涙ぐんでそう言った由佳里を見て胸が締め付けらるような気がした。
「どうかしてるね、ゴメン、今の話、高塔くんには内緒ね? 」
「由佳里…… 」
そして由佳里は頬を伝いそうになる涙を慌てて指で拭って急いで笑顔を作ってみせる。
その時薙は、薙と蓮の二人に気を使わせまいと一生懸命笑おうとしてくれる由佳里を心から愛おしいと思った。
「俺は、お前を…… っ、」
「……薙?! 」
薙は涙を堪えて笑顔を作ろうとしている由佳里に、その写真は、本当は由佳里を飾りたくて置いたのだと告白した。
もうずっと好きだったと、いつの頃だかわからないくらい昔から、俺はお前が好きだったんだと告げた。
由佳里はその告白に涙で応えてきた。
ポロポロと涙を落としながらただただ薙の名を呼んで、その胸にしがみついてきた。
「由佳里…… 」
「薙…… なぎ」
その日薙は、初めて由佳里の唇に触れた、ほんの少し、口紅の香りがした…… 。
自分の知ってた唇とは違う、温かく柔らかく、仄甘い女の唇だ。
自分の知っていた唇は、もっと冷たくて、でもとても甘くて…… 弾力のある、滑らかで薄い絹のような感触だった。
ソレは薄っすらと紅を引いた赤い唇とは違う、高塔の薄桃色をした唇だ。
もしも高塔が女だったら…… ?
薙はその妄想を振り払うかのように由佳里の唇を塞ぎ、甘く香る身体を抱きしめていた。
続く。 戻る。
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そして二人で笑いあった後、何事もなかったかのように、来週末何をして遊ぶとか、その前に期末があんじゃねえかよと、他愛無い話をしはじめた。
その時の口づけを蓮がどういう意味にとったのか、それは本当にはわからなかったし、薙自身、自分が何故そんなコトをしたのか、今一つわからずにいたが、それからも二人の関係は変わらないものと信じていた。
共に遊び、共に学び、時には学校をサボって無駄にダベって、何をするにも蓮と一緒だった。
蓮と過ごした青春時代は薙の半生の宝だったのだ。
しかし、薙にはもう一つの宝があった、幼馴染であり性別を越えた友情を持ち続けてくれた由佳里だ。
薙は小学生の頃から体格が大きく、クラスメイト同士で何か小競り合いあっても、いつも悪いのは薙のほうだと疑われていた。
デカくて怖い顔をしている、ただそれだけで敬遠されがちだった薙を、小さな頃からずっと疑う事なく信じ続けてくれた由佳里がいたからこそ、薙は曲がらずにすんだのかもしれない。
蓮と由佳里、この二人は薙にとって大事な宝だったのだ。
だが、宝は一つだからこそ宝なのだ、二つを保とうとすればどちらかが壊れる。
その亀裂はまだ目には見えていなかったが、深く静かに進行していた。
「高塔くんってまるで薙の恋人みたいね、」
ある日、薙の家に遊びに来ていた由佳里が、そう呟いた。
薙は机の上に、蓮と由佳里の二人が一緒に映っている写真を綺麗な木製の写真立に入れて飾っていた。
本当は由佳里の写真を飾るつもりだった、でも由佳里一人が映っている写真はなくて、飾りたいから撮らせてくれと言うのもなにか気恥ずかしい。
それに、そんなコトをするとまるで自分が由佳里のことを好きみたいにみえるじゃないか、いや、事実好きではあるがあくまでそれは友達としてだ。
そう自分に言い聞かせるほど、薙にとって由佳里の存在が大きく感じられてきていた。
だから、あえてその感情に蓋をしようと蓮と一緒の写真を選んだのだ。
なかなかいいのがなくて、心なしか蓮のほうがメインになっている写真になった、その写真の蓮が、とても綺麗でイイ男に映っていたのは少し癪だが、別にソレはそれでかまわないと思っていた。
薙にとっては蓮も、何モノにも変えがたい大事な人間だったからだ。
由佳里は、その写真をシミジミと見てそう言ったのだ。
「なに? なんでだよ、よせよアイツ男だぜ? 」
薙がなぜか少し後ろめたい気分に陥りながら慌ててそう答えると、由佳里は悪戯っぽく笑いながら薙のひたいを小突いた。
「わかってるわよそんなの、……でももし、高塔くんが女の子だったら私、負けちゃうなぁって思ったの」
高塔が女だったら?
薙はその言葉に少し心が震えるのを感じていた。
ありえない、もしも高塔が女だったら、そもそも自分は高塔に興味なんか持たなかっただろう、もったとしても声なんかかけなかったと思う。
……いや、違う、もしも高塔が女だったとしても、きっと同じように心魅かれたに違いない。
そしてもしかしたら由佳里の言うとおり……? 薙はそう思いながらもありえない事だと、その考えを否定した。
「バカ、そんな事アイツの前で言ってみろ、怒るぜ、きっと」
本当にありえない。
蓮は誰よりも強く潔い男なのだ。
「だってなんか薙って高塔くんが心配で仕方ないって感じに見えちゃって…… 高塔くんが美人で薙がそんなだからかな? 最近、二人の事を蔭で、美女と野獣って言ってる人がいるの知ってる? 薙って高塔くんの騎士みたいなんだもの」
美女(蓮のことだろ?)と野獣(俺か?!)……?
薙は眩暈のようなショックを受けながらその話を聞いていた。
そりゃあ確かに高塔は父親がヤクザであると言う特殊な事情もあって、いつも一人でいて寂しそうにみえたし、もちろん女ではないが美人だし、何となく庇護欲をかきたてられたのも事実だったが。
だがそれでイコール二人が妖しいと言われるのは腑に落ちない、というより嫌だと思った。
だが、口を尖らせて拗ねたように言った由佳里に反論しようと思いながらも、薙の目は自然に、由佳里の手にしていた写真へと移った。
写真の中の蓮は少し首をかしげ、楽しそうに笑っていた。
それは最初、他の男、須崎といる時に見かけ、魅せられた、屈託なく笑う子犬のような笑顔。
また見たいと思わせた笑顔。
自分の隣で笑っていて欲しいと願ったとびきりの笑顔だった。
自分は蓮をなんと思っているのだろう…… ?
フト頭を擡げた突き刺さるような疑問を深く掘り下げようとしたその時、黙ったままの薙の様子に、怒らせたと感じたのかもしれない、由佳里の涙声が聞こえた。
「ゴメン、なんかあんまり二人が仲いいから…… ヤダな私、少し妬いちゃったかな」
涙ぐんでそう言った由佳里を見て胸が締め付けらるような気がした。
「どうかしてるね、ゴメン、今の話、高塔くんには内緒ね? 」
「由佳里…… 」
そして由佳里は頬を伝いそうになる涙を慌てて指で拭って急いで笑顔を作ってみせる。
その時薙は、薙と蓮の二人に気を使わせまいと一生懸命笑おうとしてくれる由佳里を心から愛おしいと思った。
「俺は、お前を…… っ、」
「……薙?! 」
薙は涙を堪えて笑顔を作ろうとしている由佳里に、その写真は、本当は由佳里を飾りたくて置いたのだと告白した。
もうずっと好きだったと、いつの頃だかわからないくらい昔から、俺はお前が好きだったんだと告げた。
由佳里はその告白に涙で応えてきた。
ポロポロと涙を落としながらただただ薙の名を呼んで、その胸にしがみついてきた。
「由佳里…… 」
「薙…… なぎ」
その日薙は、初めて由佳里の唇に触れた、ほんの少し、口紅の香りがした…… 。
自分の知ってた唇とは違う、温かく柔らかく、仄甘い女の唇だ。
自分の知っていた唇は、もっと冷たくて、でもとても甘くて…… 弾力のある、滑らかで薄い絹のような感触だった。
ソレは薄っすらと紅を引いた赤い唇とは違う、高塔の薄桃色をした唇だ。
もしも高塔が女だったら…… ?
薙はその妄想を振り払うかのように由佳里の唇を塞ぎ、甘く香る身体を抱きしめていた。
続く。 戻る。
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恋する詩神 82
― スロウレイン 10 ―
著:葉邑桐也
「おう旭、ここだぜ」
薄暗い地下の店内へ入ると、一番奥のほうから飛田が酒の満たされたグラスを手に片手を上げてみせる。
小走りで奥まで進でいく、飛田はカウンターの横の小さなテーブルに座っていてウイスキーのボトルと、氷、そしてミネラルウォーターが置いてある。
つまみらしいものはちょこんとナッツが添えられているだけで、飛田もあまり飲みながら食べるほうでは無いらしいとわかる。
まだ肌寒さが残る気温なのに飛田は半袖のTシャツの袖を肩までまくり上げ、龍の刺青が覗いている。
ああ、やっぱり綺麗だな、旭はボンヤリとそう考えながら飛田の斜め横の席へ座った。
やや暗い表情で伏せ目がちに薄く笑みを浮かべながら椅子に座る旭を、飛田はまるで値踏みするようにジッと見ていた。
そんな飛田の視線には気付かず、旭はカウンターのほうへ片手を上げる。
「何でもいいから、この店で一番強いヤツ、くれる? 」
旭はカウンター内のバーデンがチラリと自分を見て小さく会釈したのを確認してから、憂鬱そうに息を吐く。
「来るなりそれかよ、どうした? 」
なにかを確かめるようにゆっくりとした口調で飛田が訊ねると、旭は着ていた上着を脱いで横の椅子にかけてから、左手で自分の首すじに触れた。
そして気だるそうに息を吐きながら、その指を顎から下唇へと移動させていく。
たぶんそれらは無意識の行動だろう、指先は唇をなぞり、チロリと覗いた赤く濡れた舌先がその中指を舐める。
「別に…… 今日は俺、ちょっと飲みたい気分なんです」
そう答えた旭は、また中指を唇に当て、唇は指先を取り込んでいく。
瞳は虚ろで、飛田のほうを見てもいない。
旭の唇は取り込んだ中指を舌先で舐め、薄く開いた唇の奥にある歯で軽く噛む、唾液で濡れた指先は、まるで愛撫するように唇をなぞってはまた唇の中へ入り込み、舌先は中指を舐める事に熱中する。
注文した酒が出されるまで、旭はずっとそれを繰り返している。
そして旭のその姿をジッと見ていた飛田がボソリと呟いた。
「お前…… 変わったな」
「……え? そうですか? 」
話しかけられて急に正気に帰ったように旭が聞き返す、でもまだ左手は口元に当てられたままだ。
飛田は自分のグラスを空けながら狼のような目で旭を見ていた。
「おい、俺にもコイツと同じヤツ頼むぜ」
空のグラスを翳しながら、奥のカウンターに振り向きもせず告げると、バーテンのハイ、と言う返事が聞こえてくる。
旭が少し途惑って小首を傾げると、飛田は運ばれてきた酒に口をつけながらも、旭から視線を外すことなく言った。
「以前のお前はまるで硝子ケースに収まった人形みてえだったじゃねえか、だが今は違う、生身の男になった、恋する男の目をして、生きてそこにいる、一人の人間だ」
「酷いな、それじゃ俺、今まで生きてなかったんですか? 」
「ああ、生きてなかった、少なくとも俺には生きた人間に見えなかったね、だからヤル気にならなかった、だが今は生きてる、」
「…… 」
そう言われた旭は、その言葉の意味を考えているかのように暫く呆然と飛田を見ていた。
自分はそんなに変わったのだろうか?
恋なら圭とこうなる前にもしていたハズだ、勇樹くんが好きだったハズだ、今だって好きだ。
でも、何となく今ならわかる、勇樹くんに対する想いと、圭に対する気持ちは全然違う。
あれは恋じゃなかったんだろうか? 恋してると思ったのは錯覚で、恋じゃなかったんだろうか?
いやそんなコトはない、アレもあれで本気だったはずだ、今だって目の前にあの子がいたら抱きしめたいと思うだろう。
でも…… もう何を圧しても会いたい人ではなくなっている。
それは即ちその恋心が死んでしまった事を意味しているようで少しだけ哀しかった。
初恋は、もう終わったのだ、自分は別の方向を向いて歩きだしてしまった、旭はソレを少し淋しく感じながらも、変わっていく心と自分自身に恐怖感さえ覚えていた。
そして運ばれてきた酒に両手を添え、そのグラスに口を付けるより先に言葉を紡ぐ。
「俺…… そんなに変わった? 」
そう聞き返してきた旭の瞳は妖しく濡れていて、飛田もその瞳に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
「ああ、変わったぜ、そうさな色気が出てきた、とでも言うのか…… 今なら抱いてやってもいいぜ? どうだ? 」
「どうって…… 」
どうと言われて旭は少し途惑った。
実のところ、飛田のコトは好きだった、最初に会った時、強く魅かれるモノを感じて、抗いがたい衝動が沸き起こったのも事実で、助けに来てくれた圭や春海を疎ましくさえ感じたのも事実だった。
あの日飛田は、今のお前にはまだまだこの辺までがイイトコだ、と言って結局最後までシテはくれなかった。
圭に助け出されてからも、意識がシャンと出来なかったのは、怖かったからとか、ホッとしたからではなく、飛田に相手にされなかったのが悲しかったからだ。
自分ではダメだと言い渡された事がショックで、飛田にとって自分の価値がそんなに低いモノだったのかと哀しかったのだ。
それから何度も電話で話し、時に会い、酒を飲んでは談笑できるようになって、それはそれで有頂天だったのだが、それとほぼ同時進行で圭と付き合い始め、そして今自分は圭の恋人となっている。
飛田に望まれたコトは正直嬉しい、でも今自分には圭がいる…… 。
圭は今頃どうしているだろう?
そしてフト思い出してしまった、圭はあの、風祭蒼太のトコロへ行ったのだ、自分をおいて…… 。
行っていいと言ったのは自分だし、会って来いと言った、でも本当は行ってなんか欲しくなかった。
普段の圭なら絶対に行かない。
何を圧しても行かなかっただろう。
でも今回は行った…… それだけ、圭にとって大切な、特別な人なのだ、風祭蒼太という人は。
旭が思いつめた表情のまま黙ってしまったので、飛田は軽く息をつき、右手でソッと旭の頬に触れた。
そしてハッとしたように自分を見た旭に溜息混じりに問いかける。
「そんな顔すんな、冗談だって…… で? どうした、なんかあったんだろ? 」
「…… 」
そして、それでもまだ声の出ない旭の後頭部に大きな掌を当てて軽く引き寄せ、驚いて呆然としている唇を奪う。
「?!…… 」
旭は少し驚いたようだが抗うコトはしなかった。
純度四十パーセントのアルコールの香りが口腔を、そして鼻腔を擽る。
甘い。
意識の隅で圭への罪悪感を覚えながらも、旭はその口付けに酔っていた。
だが飛田は押せばそのまま堕ちそうな旭の唇を離し、鋭い目でジッと見つめてくる。
そしてトロンとしている旭のひたいをトンと小突いた。
「サッサとゲロしちまえ、でないと本気で襲うぞ! とりあえずまあ一杯いけよ、」
「あ…… はい、うん、エッと…… はい、」
旭は慌ててそう文章にならない返事を返し、手にしていた濃い目のカクテルを一気に空けた。
トンとグラスを置いてカウンターへ次の注文を合図する、そして程なく運ばれてきたグラスの中身をまた一気に半分ほど飲んでから、「実は…… 」とその日のことを話し始めた。
NEXT. BACK.
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著:葉邑桐也
「おう旭、ここだぜ」
薄暗い地下の店内へ入ると、一番奥のほうから飛田が酒の満たされたグラスを手に片手を上げてみせる。
小走りで奥まで進でいく、飛田はカウンターの横の小さなテーブルに座っていてウイスキーのボトルと、氷、そしてミネラルウォーターが置いてある。
つまみらしいものはちょこんとナッツが添えられているだけで、飛田もあまり飲みながら食べるほうでは無いらしいとわかる。
まだ肌寒さが残る気温なのに飛田は半袖のTシャツの袖を肩までまくり上げ、龍の刺青が覗いている。
ああ、やっぱり綺麗だな、旭はボンヤリとそう考えながら飛田の斜め横の席へ座った。
やや暗い表情で伏せ目がちに薄く笑みを浮かべながら椅子に座る旭を、飛田はまるで値踏みするようにジッと見ていた。
そんな飛田の視線には気付かず、旭はカウンターのほうへ片手を上げる。
「何でもいいから、この店で一番強いヤツ、くれる? 」
旭はカウンター内のバーデンがチラリと自分を見て小さく会釈したのを確認してから、憂鬱そうに息を吐く。
「来るなりそれかよ、どうした? 」
なにかを確かめるようにゆっくりとした口調で飛田が訊ねると、旭は着ていた上着を脱いで横の椅子にかけてから、左手で自分の首すじに触れた。
そして気だるそうに息を吐きながら、その指を顎から下唇へと移動させていく。
たぶんそれらは無意識の行動だろう、指先は唇をなぞり、チロリと覗いた赤く濡れた舌先がその中指を舐める。
「別に…… 今日は俺、ちょっと飲みたい気分なんです」
そう答えた旭は、また中指を唇に当て、唇は指先を取り込んでいく。
瞳は虚ろで、飛田のほうを見てもいない。
旭の唇は取り込んだ中指を舌先で舐め、薄く開いた唇の奥にある歯で軽く噛む、唾液で濡れた指先は、まるで愛撫するように唇をなぞってはまた唇の中へ入り込み、舌先は中指を舐める事に熱中する。
注文した酒が出されるまで、旭はずっとそれを繰り返している。
そして旭のその姿をジッと見ていた飛田がボソリと呟いた。
「お前…… 変わったな」
「……え? そうですか? 」
話しかけられて急に正気に帰ったように旭が聞き返す、でもまだ左手は口元に当てられたままだ。
飛田は自分のグラスを空けながら狼のような目で旭を見ていた。
「おい、俺にもコイツと同じヤツ頼むぜ」
空のグラスを翳しながら、奥のカウンターに振り向きもせず告げると、バーテンのハイ、と言う返事が聞こえてくる。
旭が少し途惑って小首を傾げると、飛田は運ばれてきた酒に口をつけながらも、旭から視線を外すことなく言った。
「以前のお前はまるで硝子ケースに収まった人形みてえだったじゃねえか、だが今は違う、生身の男になった、恋する男の目をして、生きてそこにいる、一人の人間だ」
「酷いな、それじゃ俺、今まで生きてなかったんですか? 」
「ああ、生きてなかった、少なくとも俺には生きた人間に見えなかったね、だからヤル気にならなかった、だが今は生きてる、」
「…… 」
そう言われた旭は、その言葉の意味を考えているかのように暫く呆然と飛田を見ていた。
自分はそんなに変わったのだろうか?
恋なら圭とこうなる前にもしていたハズだ、勇樹くんが好きだったハズだ、今だって好きだ。
でも、何となく今ならわかる、勇樹くんに対する想いと、圭に対する気持ちは全然違う。
あれは恋じゃなかったんだろうか? 恋してると思ったのは錯覚で、恋じゃなかったんだろうか?
いやそんなコトはない、アレもあれで本気だったはずだ、今だって目の前にあの子がいたら抱きしめたいと思うだろう。
でも…… もう何を圧しても会いたい人ではなくなっている。
それは即ちその恋心が死んでしまった事を意味しているようで少しだけ哀しかった。
初恋は、もう終わったのだ、自分は別の方向を向いて歩きだしてしまった、旭はソレを少し淋しく感じながらも、変わっていく心と自分自身に恐怖感さえ覚えていた。
そして運ばれてきた酒に両手を添え、そのグラスに口を付けるより先に言葉を紡ぐ。
「俺…… そんなに変わった? 」
そう聞き返してきた旭の瞳は妖しく濡れていて、飛田もその瞳に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
「ああ、変わったぜ、そうさな色気が出てきた、とでも言うのか…… 今なら抱いてやってもいいぜ? どうだ? 」
「どうって…… 」
どうと言われて旭は少し途惑った。
実のところ、飛田のコトは好きだった、最初に会った時、強く魅かれるモノを感じて、抗いがたい衝動が沸き起こったのも事実で、助けに来てくれた圭や春海を疎ましくさえ感じたのも事実だった。
あの日飛田は、今のお前にはまだまだこの辺までがイイトコだ、と言って結局最後までシテはくれなかった。
圭に助け出されてからも、意識がシャンと出来なかったのは、怖かったからとか、ホッとしたからではなく、飛田に相手にされなかったのが悲しかったからだ。
自分ではダメだと言い渡された事がショックで、飛田にとって自分の価値がそんなに低いモノだったのかと哀しかったのだ。
それから何度も電話で話し、時に会い、酒を飲んでは談笑できるようになって、それはそれで有頂天だったのだが、それとほぼ同時進行で圭と付き合い始め、そして今自分は圭の恋人となっている。
飛田に望まれたコトは正直嬉しい、でも今自分には圭がいる…… 。
圭は今頃どうしているだろう?
そしてフト思い出してしまった、圭はあの、風祭蒼太のトコロへ行ったのだ、自分をおいて…… 。
行っていいと言ったのは自分だし、会って来いと言った、でも本当は行ってなんか欲しくなかった。
普段の圭なら絶対に行かない。
何を圧しても行かなかっただろう。
でも今回は行った…… それだけ、圭にとって大切な、特別な人なのだ、風祭蒼太という人は。
旭が思いつめた表情のまま黙ってしまったので、飛田は軽く息をつき、右手でソッと旭の頬に触れた。
そしてハッとしたように自分を見た旭に溜息混じりに問いかける。
「そんな顔すんな、冗談だって…… で? どうした、なんかあったんだろ? 」
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旭は少し驚いたようだが抗うコトはしなかった。
純度四十パーセントのアルコールの香りが口腔を、そして鼻腔を擽る。
甘い。
意識の隅で圭への罪悪感を覚えながらも、旭はその口付けに酔っていた。
だが飛田は押せばそのまま堕ちそうな旭の唇を離し、鋭い目でジッと見つめてくる。
そしてトロンとしている旭のひたいをトンと小突いた。
「サッサとゲロしちまえ、でないと本気で襲うぞ! とりあえずまあ一杯いけよ、」
「あ…… はい、うん、エッと…… はい、」
旭は慌ててそう文章にならない返事を返し、手にしていた濃い目のカクテルを一気に空けた。
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走ります!
旭さんからバトン貰いました。
記憶力が鈍いので、昔のことを聞かれると弱いんですが、
無い記憶を絞って挑戦してみます!
*あなたの血肉バトン*
■子供の頃、好きだった、繰り返し読んだ絵本はなんですか?
絵本・・・ごめんなさい、思い出せません。
もしかしたら読んでなかったのかも・・・
あ、でも小学生たぶん低学年の頃、世界文学全集とかいうのがウチにあってそれは読みましたね。
全13巻で世界の名作文学が、子供向けに描かれてる本です。
全部は覚えてませんが、たしか「クリスマス・キャロル」と、「ああ無情」は覚えてます。
子どもながらなにか心惹かれるというか、考えさせられる話だったんでしょうね。
■子供の頃、好きだった、あるいは自分の子供に読ませたい児童文学はなんですか?
本当に児童文学って読んだ事ないような気がします(あるいは本当に忘れてるだけかもしれませんが・・・)
大人になってから見た本も入れるとしても・・・
ごめんなさい、児童文学限定となると本当に思い浮かびません。
強いて言うなら・・・ 「」ごめんやっぱないや、お奨め出来ない。
■あなたが自分のお金で初めて買った漫画の単行本はなんですか? またそれはいつですか?
たぶん・・・萩尾望都/「ポーの一族 3巻」・・・だったかな?
「小鳥の巣」という副題がついてるヤツで、主人公のエドガーとアランが全寮制の男子校へ編入して云々という話でした。
あの話はたしか残した複線があって、まだソレは描かれてません。
望都先生が失念しちゃってるのか、わかってるけどもう書く気はないのかわかりませんが、その先が気になってる話です。
たしか小学生・・・4年か5年・・・くらいだったような気がします。
■なぜその漫画を買ったのですか?
よく覚えてません。
たしか・・・ 誰かが「凄くいいよ」と言ったのを聞いて興味を持ったような気がしますが、その誰かが思い出せない。
でも当時の私にはマンガの単行本は結構なお値段で、かなりの勇気がいった買い物でした。
だからきっと進めてくれた人のことを好きだったか信じていたんだろうなと思います。
でも結果正解だったんでOKです。
■あなたが初めて自分のお金で買った小説はなんですか? またそれはいつですか?
たぶん、大藪春彦さんの 「野獣死すべし」だったんじゃないかな・・・?
たしか、高校生になってたと思う・・・
■その小説は失敗でしたか?大当たりでしたか?
たぶん当たりだったんでしょう。
そのあと、「汚れた英雄」「 蘇える金狼 」「 優雅なる野獣 」「 マンハッタン核作戦 」
「 不屈の野獣 」「 俺に墓はいらない 」「 血の来訪者 」「 狙われた野獣 」などなど読み漁りましたから・・・
古本屋でww とにかく「伊達邦彦」のファンでしたwww
■あなたが初めて自分のお金で買ったビデオ・DVDはなんですか? またそれはいつですか?
なんだろ? ・・・たぶん、ビデオだな・・・ 沢田研二さんがやったほうの魔界転生かな?
なんかすっごく画が綺麗でドキドキして、・・・あ、でもあれはおばあちゃんに買ってもらったような・・・
自分でかぁ・・・ ごめん、覚えてない、だってたぶんビデオは高かったし、DVDも自腹で買えるようになったのはここ数年だもん、貧乏だからな・・・。
■当時のあなたにとってそれは高い買い物でしたか? どんな心境でしたか?
「魔界転生」ですか? すっごい高かったですよ、たしか14800円!!
子どもには夢のような大金です!!
■あなたが初めて創作したものを覚えていますか? 粗筋を教えてください
あんまり言いたくないが覚えてます。
主人公は旭さんも知ってる勇樹学くん(その頃は真名不だった)
GFも牧野由美ちゃんでした。
小学六年くらいのときかいたんだと思うんだが・・・
真名不は私生児で生まれつき左目が見えない、その分ちょっとした超能力があって、ソレを知ってる由美ちゃんの頼みで、色々面倒事を片付けてやっては損ばかり見るという話でした。
由美とは恋人というよりパシリ扱いだったな・・・。
■昔のあなたのオリジナルキャラクターの外見と覚えていれば名前を教えてください。オリジナルキャラクターでない場合はなんのパロディでしたか?
だから「勇樹学(真名不)」ですよ。
焦げ茶色の髪、肩より長い巻き毛。
色白で琥珀色の目、左は視力がなくて目の色も無い。
17歳、身長176cm 孤児、そしてプチエスパーw
■同人歴がある場合はその遍歴を教えてください
ありますが・・・
「オリジナル創作(漫画)」→(ブランク)→「仮面ライダー龍騎」→「現在」です。
かなりアバウトだが簡潔だ。
■あなたの尊敬するあの人に答えてもらってください!
え? じゃあ旭さん。
じゃあ戻っちゃうじゃないですか!
スイマセン、アンカーでお願いします。
ああ、改めて自分の記憶力の鈍さに驚く・・・
私って馬鹿。
記憶力が鈍いので、昔のことを聞かれると弱いんですが、
無い記憶を絞って挑戦してみます!
*あなたの血肉バトン*
■子供の頃、好きだった、繰り返し読んだ絵本はなんですか?
絵本・・・ごめんなさい、思い出せません。
もしかしたら読んでなかったのかも・・・
あ、でも小学生たぶん低学年の頃、世界文学全集とかいうのがウチにあってそれは読みましたね。
全13巻で世界の名作文学が、子供向けに描かれてる本です。
全部は覚えてませんが、たしか「クリスマス・キャロル」と、「ああ無情」は覚えてます。
子どもながらなにか心惹かれるというか、考えさせられる話だったんでしょうね。
■子供の頃、好きだった、あるいは自分の子供に読ませたい児童文学はなんですか?
本当に児童文学って読んだ事ないような気がします(あるいは本当に忘れてるだけかもしれませんが・・・)
大人になってから見た本も入れるとしても・・・
ごめんなさい、児童文学限定となると本当に思い浮かびません。
強いて言うなら・・・ 「」ごめんやっぱないや、お奨め出来ない。
■あなたが自分のお金で初めて買った漫画の単行本はなんですか? またそれはいつですか?
たぶん・・・萩尾望都/「ポーの一族 3巻」・・・だったかな?
「小鳥の巣」という副題がついてるヤツで、主人公のエドガーとアランが全寮制の男子校へ編入して云々という話でした。
あの話はたしか残した複線があって、まだソレは描かれてません。
望都先生が失念しちゃってるのか、わかってるけどもう書く気はないのかわかりませんが、その先が気になってる話です。
たしか小学生・・・4年か5年・・・くらいだったような気がします。
■なぜその漫画を買ったのですか?
よく覚えてません。
たしか・・・ 誰かが「凄くいいよ」と言ったのを聞いて興味を持ったような気がしますが、その誰かが思い出せない。
でも当時の私にはマンガの単行本は結構なお値段で、かなりの勇気がいった買い物でした。
だからきっと進めてくれた人のことを好きだったか信じていたんだろうなと思います。
でも結果正解だったんでOKです。
■あなたが初めて自分のお金で買った小説はなんですか? またそれはいつですか?
たぶん、大藪春彦さんの 「野獣死すべし」だったんじゃないかな・・・?
たしか、高校生になってたと思う・・・
■その小説は失敗でしたか?大当たりでしたか?
たぶん当たりだったんでしょう。
そのあと、「汚れた英雄」「 蘇える金狼 」「 優雅なる野獣 」「 マンハッタン核作戦 」
「 不屈の野獣 」「 俺に墓はいらない 」「 血の来訪者 」「 狙われた野獣 」などなど読み漁りましたから・・・
古本屋でww とにかく「伊達邦彦」のファンでしたwww
■あなたが初めて自分のお金で買ったビデオ・DVDはなんですか? またそれはいつですか?
なんだろ? ・・・たぶん、ビデオだな・・・ 沢田研二さんがやったほうの魔界転生かな?
なんかすっごく画が綺麗でドキドキして、・・・あ、でもあれはおばあちゃんに買ってもらったような・・・
自分でかぁ・・・ ごめん、覚えてない、だってたぶんビデオは高かったし、DVDも自腹で買えるようになったのはここ数年だもん、貧乏だからな・・・。
■当時のあなたにとってそれは高い買い物でしたか? どんな心境でしたか?
「魔界転生」ですか? すっごい高かったですよ、たしか14800円!!
子どもには夢のような大金です!!
■あなたが初めて創作したものを覚えていますか? 粗筋を教えてください
あんまり言いたくないが覚えてます。
主人公は旭さんも知ってる勇樹学くん(その頃は真名不だった)
GFも牧野由美ちゃんでした。
小学六年くらいのときかいたんだと思うんだが・・・
真名不は私生児で生まれつき左目が見えない、その分ちょっとした超能力があって、ソレを知ってる由美ちゃんの頼みで、色々面倒事を片付けてやっては損ばかり見るという話でした。
由美とは恋人というよりパシリ扱いだったな・・・。
■昔のあなたのオリジナルキャラクターの外見と覚えていれば名前を教えてください。オリジナルキャラクターでない場合はなんのパロディでしたか?
だから「勇樹学(真名不)」ですよ。
焦げ茶色の髪、肩より長い巻き毛。
色白で琥珀色の目、左は視力がなくて目の色も無い。
17歳、身長176cm 孤児、そしてプチエスパーw
■同人歴がある場合はその遍歴を教えてください
ありますが・・・
「オリジナル創作(漫画)」→(ブランク)→「仮面ライダー龍騎」→「現在」です。
かなりアバウトだが簡潔だ。
■あなたの尊敬するあの人に答えてもらってください!
え? じゃあ旭さん。
じゃあ戻っちゃうじゃないですか!
スイマセン、アンカーでお願いします。
ああ、改めて自分の記憶力の鈍さに驚く・・・
私って馬鹿。
恋する詩神 81
― スロウレイン 9 ―
著:アキト
蒼太の声に頷いてしまった圭は、固く目蓋を閉じた。
旭に謝ろう・・・。
旭の流されやすい性格を責める資格など自分にはなかったんだと。
(なんて言われる、かな)
「圭、」
耳元で蒼太が囁く。彼の熱く猛ったモノが、自分の股間の谷間にあてがわれた。
昔の自分は、何のためらいもなく喜びに震えながら蒼太とひとつになるその時を待った。
毎日、何度も、彼が望むならいつでも。
自分は蒼太が好きだ。今も。これからも。
けれども旭を裏切ることは・・・
蒼太の胸と圭の胸が擦れ合い、彼のモノが押し入ろうとした瞬間。
圭は咄嗟に蒼太の肩を力任せに押し上げ、互いの体を離す。結果的にそれは挿入を拒んだことになり、圭は瞠目した蒼太と視線を合わせてしまった。
思いがけない拒絶に目を見開いた蒼太は、やがてその瞳に冷淡さをこもらせて目を細める。
「・・・なんや?」
その冷ややかな声色に、圭は思わず息を飲んだ。
怒っているわけではなさそうだった。苛立ちだけが圭に伝わる。
圭は目を伏せて横を向いた。
「入れんとって・・・くださ、い」
かすれた声でそう言うと、目の前で両腕を組む。そうすることで自分のどうしようもない顔を見られないですむように。
蒼太の返事はなかった。圭は口中の唾液を無理矢理飲み下すと、再び懇願する。
「入れんのだけは・・・勘弁したってください。やっぱり、俺・・・」
「もうええ」
蒼太は圭の言葉を遮ると、顔を覆っていた圭の腕を掴み上げた。
「顔見せんか。何泣いとんねん」
「・・・泣いてません」
「目尻に涙貯めて何言うてるねん、アホか」
蒼太は汗で垂れ下がった前髪を掻き上げて、身を起こし、立ち上がった。
脱ぎ捨てた衣類の中から煙草とライターを取り出すと、慣れた手つきで一本口にくわえ、火を点ける。
深く吸い込み、溜息と共に煙を吐き出す様子を、圭は懐かしく思った。
「今もセッタ(セブンスター)なんですね」
言いながら、圭は上半身を起こす。
ふと視線を落とすと萎えてしまった自分のモノが目に入った。内心、イカずに済んだことにほっとしてしまう。
(入れなかった、イカなかった・・・それだけで旭への罪悪感がなくなるわけやないけど)
「そらそうや。今更、他の銘柄なんか吸う気にならん。一途なんや」
聞き流しそうになった蒼太の言葉にはっとして、圭は顔を上げる。すると蒼太は圭を愛しそうに見つめ、煙草を吹かしていた。
昔と変わらないその姿を、いつも見ていたあの頃。
圭が蒼太を追い続けていたあの頃から蒼太はセブンスターを吸っていた。
蒼太が言う「一途」というのは煙草のことだけではない。
(先輩、ずっと俺のこと想ってくれてたんや・・・)
そう思うと拒んでしまったことが申し訳なく思えてくる。
「おまえはどうやねん」
蒼太はキッチンへ向かい、灰皿代わりの空き缶を持ってくると吸っていた煙草をその中に落とし入れた。
そして、圭の前に腰を下ろし、全裸同士で向かい合う。
「俺・・・は、俺も好きですよ。でも旭くんがおるから、旭くんを泣かせることはしとうないんです。蒼太先輩には悪いけど」
「まあな。二度と会う予定がなかったみたいやからな。せやけど、さっきおまえが言うたこと俺は忘れてないで」
「さっきって・・・? 何か言いました?」
「『入れんのだけは』って言うたんや。っちゅうことは俺のん入れる以外はエエっちゅうことや」
「えええ!」
「なぁ、圭」
にわかに蒼太が右手を伸ばし、圭の後頭部を引き寄せる。
お互いの息がかかる距離まで顔を寄せ、蒼太が口の端を上げて見せる。
「コレ、拒んだら二度と会わんことにしよか」
「そんなん・・・嫌ですよ」
「おまえに拒否権なんかないの、わかっとるやろ? 黙ってたらええんや」
「でも、俺・・・あ」
蒼太が圭の言葉を遮って唇を塞ぐ。
ここに来て最初のキスよりも、どこか焦りを感じさせる口付けに、圭は蒼太の本心を垣間見たような気がした。
(ホンマに奪いに来はったんや。俺を旭くんから。蒼太先輩がそこまで俺を好きでいてくれるって、なんか・・・嬉しい)
「・・・ん、ン・・」
蒼太の指先が圭の胸の突起を弄びながら、貪るように何度も口付けを交わす。
圭は頭の芯がぼやけていくことを感じながら、心の何処かで「入れないのなら大丈夫だ」と決めつけていた。
(だって蒼太先輩のこと好きやし、気持ちいい。旭くんとやったら絶対にこないな感じで気持ちよくなられへんし・・・)
(ちょっとだけやから、旭くん、堪忍な)
NEXT. BACK.
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著:アキト
蒼太の声に頷いてしまった圭は、固く目蓋を閉じた。
旭に謝ろう・・・。
旭の流されやすい性格を責める資格など自分にはなかったんだと。
(なんて言われる、かな)
「圭、」
耳元で蒼太が囁く。彼の熱く猛ったモノが、自分の股間の谷間にあてがわれた。
昔の自分は、何のためらいもなく喜びに震えながら蒼太とひとつになるその時を待った。
毎日、何度も、彼が望むならいつでも。
自分は蒼太が好きだ。今も。これからも。
けれども旭を裏切ることは・・・
蒼太の胸と圭の胸が擦れ合い、彼のモノが押し入ろうとした瞬間。
圭は咄嗟に蒼太の肩を力任せに押し上げ、互いの体を離す。結果的にそれは挿入を拒んだことになり、圭は瞠目した蒼太と視線を合わせてしまった。
思いがけない拒絶に目を見開いた蒼太は、やがてその瞳に冷淡さをこもらせて目を細める。
「・・・なんや?」
その冷ややかな声色に、圭は思わず息を飲んだ。
怒っているわけではなさそうだった。苛立ちだけが圭に伝わる。
圭は目を伏せて横を向いた。
「入れんとって・・・くださ、い」
かすれた声でそう言うと、目の前で両腕を組む。そうすることで自分のどうしようもない顔を見られないですむように。
蒼太の返事はなかった。圭は口中の唾液を無理矢理飲み下すと、再び懇願する。
「入れんのだけは・・・勘弁したってください。やっぱり、俺・・・」
「もうええ」
蒼太は圭の言葉を遮ると、顔を覆っていた圭の腕を掴み上げた。
「顔見せんか。何泣いとんねん」
「・・・泣いてません」
「目尻に涙貯めて何言うてるねん、アホか」
蒼太は汗で垂れ下がった前髪を掻き上げて、身を起こし、立ち上がった。
脱ぎ捨てた衣類の中から煙草とライターを取り出すと、慣れた手つきで一本口にくわえ、火を点ける。
深く吸い込み、溜息と共に煙を吐き出す様子を、圭は懐かしく思った。
「今もセッタ(セブンスター)なんですね」
言いながら、圭は上半身を起こす。
ふと視線を落とすと萎えてしまった自分のモノが目に入った。内心、イカずに済んだことにほっとしてしまう。
(入れなかった、イカなかった・・・それだけで旭への罪悪感がなくなるわけやないけど)
「そらそうや。今更、他の銘柄なんか吸う気にならん。一途なんや」
聞き流しそうになった蒼太の言葉にはっとして、圭は顔を上げる。すると蒼太は圭を愛しそうに見つめ、煙草を吹かしていた。
昔と変わらないその姿を、いつも見ていたあの頃。
圭が蒼太を追い続けていたあの頃から蒼太はセブンスターを吸っていた。
蒼太が言う「一途」というのは煙草のことだけではない。
(先輩、ずっと俺のこと想ってくれてたんや・・・)
そう思うと拒んでしまったことが申し訳なく思えてくる。
「おまえはどうやねん」
蒼太はキッチンへ向かい、灰皿代わりの空き缶を持ってくると吸っていた煙草をその中に落とし入れた。
そして、圭の前に腰を下ろし、全裸同士で向かい合う。
「俺・・・は、俺も好きですよ。でも旭くんがおるから、旭くんを泣かせることはしとうないんです。蒼太先輩には悪いけど」
「まあな。二度と会う予定がなかったみたいやからな。せやけど、さっきおまえが言うたこと俺は忘れてないで」
「さっきって・・・? 何か言いました?」
「『入れんのだけは』って言うたんや。っちゅうことは俺のん入れる以外はエエっちゅうことや」
「えええ!」
「なぁ、圭」
にわかに蒼太が右手を伸ばし、圭の後頭部を引き寄せる。
お互いの息がかかる距離まで顔を寄せ、蒼太が口の端を上げて見せる。
「コレ、拒んだら二度と会わんことにしよか」
「そんなん・・・嫌ですよ」
「おまえに拒否権なんかないの、わかっとるやろ? 黙ってたらええんや」
「でも、俺・・・あ」
蒼太が圭の言葉を遮って唇を塞ぐ。
ここに来て最初のキスよりも、どこか焦りを感じさせる口付けに、圭は蒼太の本心を垣間見たような気がした。
(ホンマに奪いに来はったんや。俺を旭くんから。蒼太先輩がそこまで俺を好きでいてくれるって、なんか・・・嬉しい)
「・・・ん、ン・・」
蒼太の指先が圭の胸の突起を弄びながら、貪るように何度も口付けを交わす。
圭は頭の芯がぼやけていくことを感じながら、心の何処かで「入れないのなら大丈夫だ」と決めつけていた。
(だって蒼太先輩のこと好きやし、気持ちいい。旭くんとやったら絶対にこないな感じで気持ちよくなられへんし・・・)
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+咎人の恋+ 8
― 月の恋 4 ―
薙と付き合い始めてから半年、蓮は一度も自宅へ薙を招いた事はなかった。
それは自分がヤクザの組長の子どもだと知られたくなかったからだ。
薙は、理由もなく人を差別するような人間ではないし、事実を知ったあともその態度は変わらないかもしれないとは思ったが、それでも、万が一にも薙と離れるようなコトにはなりたくなかったのだ。
だがその日は、近くに出来たアミューズメントへ行ってみたいと言った薙に押し切られ、自宅近くで待ち合わせの約束をしてしまった。
学生名簿で、住所だけは知れているので、待ち合わせに遅れたらそれこそ、自宅へ来られかねない、来られたら困る!
だが急いで家を出ようとしていた蓮の後ろから、低く、冷たい声がした。
「蓮、ドコへいく? 」
「親父…… 」
呼び止めたのは父親だった、いつにも増して渋い顔をしている、だいたいこういう顔をしている時はイイ話ではないのがわかっている。
蓮は出来るなら聞きたくないなと軽く睨んだ。
「ドコだっていいだろ、俺は忙しいんだ、話しならアトにしてくれ、」
そう言い返す蓮に、父親、高塔力(りき)は逆らう事を許さない極道の頂点に立つモノの眼力で見つめ、低く、唸るような声で話した。
「連合の、浮岳(うきたけ)坊ちゃんを知っているな? 」
「……ああ、だからなんだ? 」
連合、というのは所謂極道の集まり、関東近辺に巣食う大小さまざまな組を束ねている組織の事で、ようするに極道の親玉のようなものだ。
日本地図を三つに別けた感じで、関東、関西、極東に分かれている極道の集団。
その関東を束ねているのは、通称連合と呼ばれる関東白峰連合会であり、言わば、蓮の父親の束ねる鷲尾会の親玉のようなものなのだ。
そして、浮岳坊ちゃんと言うのは、ソコの白峰会長の孫(息子は東西の抗争の末暗殺されていて現在七十歳の爺と、九十二歳の大爺が連合を仕切っている)、白峰浮岳(二十四歳)のことだ。
「坊ちゃんがこの間の会長の祝賀会でお前を見かけてな、えらく気に入ったそうだ、たまには遊びに来いと言ってきている」
「それは強制かよ、いかなきゃウチの面子が立たなくなるとか言う気か? 」
浮岳という男は、会長の孫という事を最大の武器に、好き放題の道楽息子で、権力に媚び諂う輩のことなど、なんとも思わない、所謂大馬鹿野郎の類であり、そのチャラチャラとした外見からして、気に喰わない奴だった。
配下の組の組長の子ども達を集めては甚振って楽しもうという腹なのは目に見えている。
普段組長の子どもとしてチヤホヤされているガキどもをワザと侮辱し、嬲り、汚物を舐めさせ、屈辱に震える姿を眺めては嘲笑する事で、自分の優位を確認したい、そんな下品な男なのだ。
「いや、そうではない、ただそういう話がきているというダケの話だ」
父親はそう言ったが、たぶんそれは半ば命令なのだろうなという事は蓮にも察しがついた。
ただ仮にも自分の息子をそんな目にあわせたくないと思ってでもくれたのか、イヤ、たぶん命令だからやむを得ないのだ、行ってくれ、と頭を下げるのが嫌なだけだろうと思った。
「悪いけど、今日は用があんだよ、そっちの件は考えとく、そんでいいんだろ? 」
「ああ、それでいい」
父親はホッとした顔をしていた。
たぶん、蓮がいう事を聞いて浮岳のところへ行く事を承知したと感じたのだろう。
所詮親父も極道。
上からの命令には逆らえないとうワケだ。
蓮は少しの失望と、いつかは浮岳のトコロへ行かなければならないコトへの憂鬱な思いを引きずりながらも、薙との待ち合わせ時間にはまだ余裕で間に合うはずだと、急いで家を出て行った。
だが、時既に遅し、蓮はついうっかり失念していた。
待ち合わせにギリギリか、ともすれば遅刻気味の自分と違い、薙がいつも待ち合わせ時刻より二十分は早く現場についていることを…… 。
現場では既に、蓮の付き人、須崎が薙に、蓮の正体を話してしまっていた、つまりバレたという事だ。
もちろん隠し遂せるモノではないし、いつかは話さなければならないとは思っていた、でもそれはもう少し先の話で、もっと自分達が信じあい、この友情が揺るぎ無いモノになってからにしたかった。
といってソレが何時かと言うのは見当もつかない話ではあったが…… 。
蓮は薙を町外れの埠頭へ連れて行き、薙の覚悟を聞いた。
自分といたらお前まで白い目で見られるコトになるだろう、離れるなら今のうちだぞ、と言った。
それは半ば本気だった。
離れるなら今のうちだ、自分がこれ以上薙に溺れ、依存し、薙なしではいられなくなる前に、去るなら去って欲しかったのだ。
だが、薙はその質問になんとキスで答えた。
ジッと蓮を睨んでいた薙が、突然スイッと近づき、肩を引き寄せて口づけをしてきた。
「?!」
一瞬、なにがおきたのか理解出来ないほど、唐突だったその口づけは、唇の表面が触れるだけの軽いモノではあったが、時間にして十五秒近かったと思う。
唇の表面を撫でるように僅かに蠢きながら、蓮の唇を挟み込むように啄ばまれる口づけに、蓮は永遠を感じていた。
胸の奥からなにか熱い思いが込み上げてくる。
涙腺が緩んで思わず泣き出しそうになった時、薙の唇は、触れてきた時と同じく唐突にスッと離れた。
離された薙の唇を恋しがって、蓮の心と唇が薙を追いかけようとする。
だが薙は今あったことなど、なんでもないコトであるかのように、いつもと同じ調子で、蓮の肩を固く抱いて言った。
「俺がそんな男だと思うのか? 俺はお前が好きだ、お前が何者でも、この先何があっても、それだけは絶対に変わらねえからな! 」
その言葉に蓮は思いっきり動揺していた。
唐突な口づけ、そして、告白かと疑うような薙の熱烈な言葉。
身体中の血液がブワッと音を立ててあわ立ち、自分でも馬鹿みたいに真っ赤になっているのがわかった、血迷って、あらぬ言葉を口走りそうで、慌てて言い返す。
「やっ…… やっぱお前そっち系か?! そうなのか?! 」
後ろへ下がりながら、胡散臭いものを見るようにしてそういうと、薙も思いっきりチカラを込めて怒鳴り返してきた。
「違う! 今のは親愛の情ってヤツだ、分かれ、そんくれえ!! 」
「わかるか、そんなもん! 」
「違うからな、絶対違うからな!! 」
「ホントかよ、お前だいたい最初会った時から危なそうだったもんなあ…… 」
なにもそんなに思いっきり否定しなくてもいいんじゃないのか? と言い返しそうになりながら、蓮は先ほどのキスで舞い上がり、上擦った心を沈めようと心の中で深呼吸を繰り返す。
「違うっつってんだろ、誰が危ねえってんだ! 」
だが、ムキになってそう怒鳴り散らす薙は、それほど怒っているというワケではなさそうで、笑いながら話していた。
たぶん、本当になんの下心も薙にはないんだろうなとソレは信じられた。
信じられたと同時に、一抹の淋しさを覚え、それが蓮の胸の隙間に濁った風を吹かせていた。
「変わらねえよ、俺は…… 俺達はずっと親友だ、そうだろ蓮? 」
真面目な表情で、蓮の横に立ち、極自然に静かに、薙はそう言った、蓮はその言葉を嬉しく聞きながら、もう一方では悲しみを感じていた。
俺達はずっと親友だ。
そうだろ蓮?
「ああ、そうだな…… 」
蓮は、心の中に吹き始めた薄汚れた風の音に悩まされながら、そう返事を返していた。
続く。 戻る。
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それは自分がヤクザの組長の子どもだと知られたくなかったからだ。
薙は、理由もなく人を差別するような人間ではないし、事実を知ったあともその態度は変わらないかもしれないとは思ったが、それでも、万が一にも薙と離れるようなコトにはなりたくなかったのだ。
だがその日は、近くに出来たアミューズメントへ行ってみたいと言った薙に押し切られ、自宅近くで待ち合わせの約束をしてしまった。
学生名簿で、住所だけは知れているので、待ち合わせに遅れたらそれこそ、自宅へ来られかねない、来られたら困る!
だが急いで家を出ようとしていた蓮の後ろから、低く、冷たい声がした。
「蓮、ドコへいく? 」
「親父…… 」
呼び止めたのは父親だった、いつにも増して渋い顔をしている、だいたいこういう顔をしている時はイイ話ではないのがわかっている。
蓮は出来るなら聞きたくないなと軽く睨んだ。
「ドコだっていいだろ、俺は忙しいんだ、話しならアトにしてくれ、」
そう言い返す蓮に、父親、高塔力(りき)は逆らう事を許さない極道の頂点に立つモノの眼力で見つめ、低く、唸るような声で話した。
「連合の、浮岳(うきたけ)坊ちゃんを知っているな? 」
「……ああ、だからなんだ? 」
連合、というのは所謂極道の集まり、関東近辺に巣食う大小さまざまな組を束ねている組織の事で、ようするに極道の親玉のようなものだ。
日本地図を三つに別けた感じで、関東、関西、極東に分かれている極道の集団。
その関東を束ねているのは、通称連合と呼ばれる関東白峰連合会であり、言わば、蓮の父親の束ねる鷲尾会の親玉のようなものなのだ。
そして、浮岳坊ちゃんと言うのは、ソコの白峰会長の孫(息子は東西の抗争の末暗殺されていて現在七十歳の爺と、九十二歳の大爺が連合を仕切っている)、白峰浮岳(二十四歳)のことだ。
「坊ちゃんがこの間の会長の祝賀会でお前を見かけてな、えらく気に入ったそうだ、たまには遊びに来いと言ってきている」
「それは強制かよ、いかなきゃウチの面子が立たなくなるとか言う気か? 」
浮岳という男は、会長の孫という事を最大の武器に、好き放題の道楽息子で、権力に媚び諂う輩のことなど、なんとも思わない、所謂大馬鹿野郎の類であり、そのチャラチャラとした外見からして、気に喰わない奴だった。
配下の組の組長の子ども達を集めては甚振って楽しもうという腹なのは目に見えている。
普段組長の子どもとしてチヤホヤされているガキどもをワザと侮辱し、嬲り、汚物を舐めさせ、屈辱に震える姿を眺めては嘲笑する事で、自分の優位を確認したい、そんな下品な男なのだ。
「いや、そうではない、ただそういう話がきているというダケの話だ」
父親はそう言ったが、たぶんそれは半ば命令なのだろうなという事は蓮にも察しがついた。
ただ仮にも自分の息子をそんな目にあわせたくないと思ってでもくれたのか、イヤ、たぶん命令だからやむを得ないのだ、行ってくれ、と頭を下げるのが嫌なだけだろうと思った。
「悪いけど、今日は用があんだよ、そっちの件は考えとく、そんでいいんだろ? 」
「ああ、それでいい」
父親はホッとした顔をしていた。
たぶん、蓮がいう事を聞いて浮岳のところへ行く事を承知したと感じたのだろう。
所詮親父も極道。
上からの命令には逆らえないとうワケだ。
蓮は少しの失望と、いつかは浮岳のトコロへ行かなければならないコトへの憂鬱な思いを引きずりながらも、薙との待ち合わせ時間にはまだ余裕で間に合うはずだと、急いで家を出て行った。
だが、時既に遅し、蓮はついうっかり失念していた。
待ち合わせにギリギリか、ともすれば遅刻気味の自分と違い、薙がいつも待ち合わせ時刻より二十分は早く現場についていることを…… 。
現場では既に、蓮の付き人、須崎が薙に、蓮の正体を話してしまっていた、つまりバレたという事だ。
もちろん隠し遂せるモノではないし、いつかは話さなければならないとは思っていた、でもそれはもう少し先の話で、もっと自分達が信じあい、この友情が揺るぎ無いモノになってからにしたかった。
といってソレが何時かと言うのは見当もつかない話ではあったが…… 。
蓮は薙を町外れの埠頭へ連れて行き、薙の覚悟を聞いた。
自分といたらお前まで白い目で見られるコトになるだろう、離れるなら今のうちだぞ、と言った。
それは半ば本気だった。
離れるなら今のうちだ、自分がこれ以上薙に溺れ、依存し、薙なしではいられなくなる前に、去るなら去って欲しかったのだ。
だが、薙はその質問になんとキスで答えた。
ジッと蓮を睨んでいた薙が、突然スイッと近づき、肩を引き寄せて口づけをしてきた。
「?!」
一瞬、なにがおきたのか理解出来ないほど、唐突だったその口づけは、唇の表面が触れるだけの軽いモノではあったが、時間にして十五秒近かったと思う。
唇の表面を撫でるように僅かに蠢きながら、蓮の唇を挟み込むように啄ばまれる口づけに、蓮は永遠を感じていた。
胸の奥からなにか熱い思いが込み上げてくる。
涙腺が緩んで思わず泣き出しそうになった時、薙の唇は、触れてきた時と同じく唐突にスッと離れた。
離された薙の唇を恋しがって、蓮の心と唇が薙を追いかけようとする。
だが薙は今あったことなど、なんでもないコトであるかのように、いつもと同じ調子で、蓮の肩を固く抱いて言った。
「俺がそんな男だと思うのか? 俺はお前が好きだ、お前が何者でも、この先何があっても、それだけは絶対に変わらねえからな! 」
その言葉に蓮は思いっきり動揺していた。
唐突な口づけ、そして、告白かと疑うような薙の熱烈な言葉。
身体中の血液がブワッと音を立ててあわ立ち、自分でも馬鹿みたいに真っ赤になっているのがわかった、血迷って、あらぬ言葉を口走りそうで、慌てて言い返す。
「やっ…… やっぱお前そっち系か?! そうなのか?! 」
後ろへ下がりながら、胡散臭いものを見るようにしてそういうと、薙も思いっきりチカラを込めて怒鳴り返してきた。
「違う! 今のは親愛の情ってヤツだ、分かれ、そんくれえ!! 」
「わかるか、そんなもん! 」
「違うからな、絶対違うからな!! 」
「ホントかよ、お前だいたい最初会った時から危なそうだったもんなあ…… 」
なにもそんなに思いっきり否定しなくてもいいんじゃないのか? と言い返しそうになりながら、蓮は先ほどのキスで舞い上がり、上擦った心を沈めようと心の中で深呼吸を繰り返す。
「違うっつってんだろ、誰が危ねえってんだ! 」
だが、ムキになってそう怒鳴り散らす薙は、それほど怒っているというワケではなさそうで、笑いながら話していた。
たぶん、本当になんの下心も薙にはないんだろうなとソレは信じられた。
信じられたと同時に、一抹の淋しさを覚え、それが蓮の胸の隙間に濁った風を吹かせていた。
「変わらねえよ、俺は…… 俺達はずっと親友だ、そうだろ蓮? 」
真面目な表情で、蓮の横に立ち、極自然に静かに、薙はそう言った、蓮はその言葉を嬉しく聞きながら、もう一方では悲しみを感じていた。
俺達はずっと親友だ。
そうだろ蓮?
「ああ、そうだな…… 」
蓮は、心の中に吹き始めた薄汚れた風の音に悩まされながら、そう返事を返していた。
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恋する詩神 80
― スロウレイン 8 ―
著:葉邑桐也
自然と落ちていく瞼。
暗闇に包まれた圭の頬に、唇に、首筋に、蒼太の熱い息がかかる。
そして耳元で懐かしい声がした。
「圭、口、開けてみ」
そうすると圭の唇はまるで条件反射のようにスウッと開かれる。
そこへ煙草の香りのする蒼太の舌が入り込んでくる。
最後に身体を繋げたのはいつのコトだったろう?
高校卒業し、上京するまで、一応の付き合いはあった、でも既にその頃はそんな関係になくて、ただかつての先輩と後輩というだけのような関係だった。
蒼太は地元のヤクザの下っ端に収まり、自分はただの不良学生だった。
圭をヤクザな世界へ近づけさせまいとしてだろう、蒼太は圭に必要以上の接触をしなくなっていた。
恋しかった。
蒼太が総長でなくなっても、壬晒組がなくなっても、自分が副長でなくなっても、蒼太の隣にずっといたかった、いられると思っていた。
だが蒼太はそれを許してはくれなかったのだ。
蒼太は圭がついて行く事を拒んだ、それでも最後までついて行きたかった。
邪魔だと怒鳴られてもいい、足手まといだと、どうしようもない半端な甘ちゃんだと罵られてもいい、それでもついて行きたかった。
殴られても、蹴られても、離れたくなかったのに…… 自分はなんでそうしなかったんだろう?
ボンヤリとそんなコトを考えながら、圭は無意識に蒼太の言うままに動こうとする自分になんの不思議も感じるコトが出来なくなっていた。
蒼太の指が固く勃ちあがった胸の突起を擦るように愛撫していく、そうされながらの口づけは全身が溶け出しそうなほど甘くて、圭の思考は完全に停止しようとしていた。
蒼太は、唇を塞がれ身体中を熱い手で愛撫され、息も絶え絶えな圭のシャツを脱がせて、ズボンの前を開けた。
ソッと触れると、圭の雄蕊は蒼太の指に反応して緩く勃ちあがり、先端は濡れはじめていた
「ヤラしいやっちゃな、もうこんなにしよって…… そんな待っとったんか? 」
その囁きがまるで魔法のように圭の時間を巻き戻していく、圭は蒼太の腕を掴んで濡れて黒目がちな瞳をむけていた。
「相変らず可愛い奴や、成りだけはデカなっても、そういうんは変わらへんな、圭…… 」
そう呟いた蒼太は、圭の着ているモノを一枚一枚脱がせていく、その度に、圭はほんの少し身体をずらしソレを手伝った。
圭を全部脱がせてから、蒼太も自ら全裸になり、大人しくされるがままの圭の背中を長座布団の上に押し付けた。
「……圭」
「ん、 ……ン、」
そしてまた熱く唇を重ね奪い合うように熱く煮え滾った唾液を混ぜ合っていく。
蒼太が圭と最後に抱き合ったのは圭が十六歳、蒼太が二十歳の時だった。
その頃圭はまだまだ小柄で、たぶん身長は150なかっただろう。
一番濃密に愛し合っていた頃はさらに小さく、140そこそこ、いや135程度だったかもしれない。
小さな身体に生意気な光る目を持った圭を蒼太は手加減なく愛していた。
だから、と言ってはなんだが、どんなアクロバティックな体位も思いのままで、圭にとっては辛いコトも多かっただろう。
だが、今や圭も二十四歳になり身長は180にとどき、ハッキリ言って蒼太よりも背が高いくらいで、前と同じようには扱えない。
蒼太は散々に焦らせて言いなりの人形のようになった圭の足を大きく開かせて唾液で湿らせただけの指先をその秘孔へ忍び込ませていった。
ズキン。
最近ではそんなコトをされる立場になかった圭は、慣れていない秘孔への侵入に、軽く痛みを覚え、意識が片目を開けた。
クニュっと音をたてて、蒼太の指が圭の中で快感の種を探る。
「ぁ、アッ…… ! 」
他愛もなく探り当てられてしまった種がジクジクと疼きだし、圭は背中を反り返らせて小さな声を上げる。
と、その時、圭の脳裏に旭の後姿が浮かんだ。
―― 旭くん…… !
圭はまるで自分が二人いるような奇妙な感覚に捉われていた。
旭を愛し、想い、世界が終わるまで、死が二人を別つまで、いつまでも大切に守っていきたいと望む自分と、蒼太を想い、慕って、地の果てまで、ついていきたいと思う自分。
永遠に相入れるコトの無い、正反対の二つの感情に責め立てられ、身動きすることさえ出来なくなっていく。
旭も、蒼太も、ココで手を離したらもう二度と一緒に歩くコトは出来ないのだ…… 。
蒼太は、涙目で首を振る圭の反応を楽しむように意地悪く指先をくねらせていく、そしてその度にビクビク震える圭を翻弄していた。
指先は二本、三本と増やされ、圭の秘孔を押し広げていく。
そして長い時間をかけ、壷の中に仕舞い込み、隠し続けていた秘密を暴きたてる。
圭がいつか、図らずも自分でも心配していたように、押し殺し、忘れたフリをしていた甘い想いは年月を経て発酵し、今、圭を、そして蒼太を酔わせる美酒に変わっていた。
「あっ、ァ、もうアカンです、先輩…… ! 」
追い詰められた圭が悲鳴を上げる。
「アホ、これからやろ、勝手にイクんは許さへんからな、」
冷たく、なのにどこか優しい蒼太の声がカラッポの頭の中に響いている。
蒼太はガクガクと震える圭の雄蕊を固く掴んで射精を阻んでから、おもむろに息を吐いた。
「ココからが本番やないか、キッチリ堪えてろ、ええな? 」
コレを受け入れたらそこで終りだ。
久しぶりの再会なんだから、ゆっくり話したいコトもあるでしょう? いいから行ってきなと、蒼太の元へ行くことを許してくれた心優しい旭に合わせる顔がなくなる。
そう頭の隅で思いながら、圭は魔法のような蒼太の冷たく優しい声に逆らうコトが出来ず、小さく頷いた。
「ハ…… イ、」
――――――――
「……圭くん、」
圭が去って行ったあと、暫くのあいだ、呆然としていた旭は、やがてゆっくりと顔を上げ、ポケットの中の携帯を取り出した。
そして見知った番号を押す。
短いコール音のアト、相手が出た。
『旭か? どうした、めずらしいな、』
「あ飛田さん? 良かった、起きてたんだ、」
『何言ってやがる、まだ十一時だぜ、宵の口じゃねえかよ』
「そっか、……ね、今から会えない? 飲みたいんだ、付き合ってよ、」
『贅沢な奴だな、彼氏と喧嘩でもしたか? ……まあいい、いつもの店にいんからよ、気が向いたらきな、三時頃まではいるからよ、』
「うん、ありがとう、すぐ行くね、」
旭はホッとしたようにそう答えると、閉じた携帯をジッと見つめ、電源を落してからポケットにしまった。
今夜はもう、万が一にも蒼太の元へ向かう圭の声を聞きたくないと思ったからだ。
圭と、蒼太があってどうなるのか、さっき休憩中に見た限りでは、その後の展開が容易に想像できるような気がする。
そして、まさか…… という思いを隠し、圭に返しそびれていた蒼太の店のレシートを見つめて、また鞄の中へしまいこんだ。
圭くん、ゴメンね。
やっぱり今日はあんまり食べれないかもしれない。
少し飲んじゃうし、相手は飛田さんだけど、でもちょっとだけだから…… 。
心の中で旭は、そう独り言のような言い訳をして、飛田の待つ店へ急いでいった。
NEXT. BACK.
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著:葉邑桐也
自然と落ちていく瞼。
暗闇に包まれた圭の頬に、唇に、首筋に、蒼太の熱い息がかかる。
そして耳元で懐かしい声がした。
「圭、口、開けてみ」
そうすると圭の唇はまるで条件反射のようにスウッと開かれる。
そこへ煙草の香りのする蒼太の舌が入り込んでくる。
最後に身体を繋げたのはいつのコトだったろう?
高校卒業し、上京するまで、一応の付き合いはあった、でも既にその頃はそんな関係になくて、ただかつての先輩と後輩というだけのような関係だった。
蒼太は地元のヤクザの下っ端に収まり、自分はただの不良学生だった。
圭をヤクザな世界へ近づけさせまいとしてだろう、蒼太は圭に必要以上の接触をしなくなっていた。
恋しかった。
蒼太が総長でなくなっても、壬晒組がなくなっても、自分が副長でなくなっても、蒼太の隣にずっといたかった、いられると思っていた。
だが蒼太はそれを許してはくれなかったのだ。
蒼太は圭がついて行く事を拒んだ、それでも最後までついて行きたかった。
邪魔だと怒鳴られてもいい、足手まといだと、どうしようもない半端な甘ちゃんだと罵られてもいい、それでもついて行きたかった。
殴られても、蹴られても、離れたくなかったのに…… 自分はなんでそうしなかったんだろう?
ボンヤリとそんなコトを考えながら、圭は無意識に蒼太の言うままに動こうとする自分になんの不思議も感じるコトが出来なくなっていた。
蒼太の指が固く勃ちあがった胸の突起を擦るように愛撫していく、そうされながらの口づけは全身が溶け出しそうなほど甘くて、圭の思考は完全に停止しようとしていた。
蒼太は、唇を塞がれ身体中を熱い手で愛撫され、息も絶え絶えな圭のシャツを脱がせて、ズボンの前を開けた。
ソッと触れると、圭の雄蕊は蒼太の指に反応して緩く勃ちあがり、先端は濡れはじめていた
「ヤラしいやっちゃな、もうこんなにしよって…… そんな待っとったんか? 」
その囁きがまるで魔法のように圭の時間を巻き戻していく、圭は蒼太の腕を掴んで濡れて黒目がちな瞳をむけていた。
「相変らず可愛い奴や、成りだけはデカなっても、そういうんは変わらへんな、圭…… 」
そう呟いた蒼太は、圭の着ているモノを一枚一枚脱がせていく、その度に、圭はほんの少し身体をずらしソレを手伝った。
圭を全部脱がせてから、蒼太も自ら全裸になり、大人しくされるがままの圭の背中を長座布団の上に押し付けた。
「……圭」
「ん、 ……ン、」
そしてまた熱く唇を重ね奪い合うように熱く煮え滾った唾液を混ぜ合っていく。
蒼太が圭と最後に抱き合ったのは圭が十六歳、蒼太が二十歳の時だった。
その頃圭はまだまだ小柄で、たぶん身長は150なかっただろう。
一番濃密に愛し合っていた頃はさらに小さく、140そこそこ、いや135程度だったかもしれない。
小さな身体に生意気な光る目を持った圭を蒼太は手加減なく愛していた。
だから、と言ってはなんだが、どんなアクロバティックな体位も思いのままで、圭にとっては辛いコトも多かっただろう。
だが、今や圭も二十四歳になり身長は180にとどき、ハッキリ言って蒼太よりも背が高いくらいで、前と同じようには扱えない。
蒼太は散々に焦らせて言いなりの人形のようになった圭の足を大きく開かせて唾液で湿らせただけの指先をその秘孔へ忍び込ませていった。
ズキン。
最近ではそんなコトをされる立場になかった圭は、慣れていない秘孔への侵入に、軽く痛みを覚え、意識が片目を開けた。
クニュっと音をたてて、蒼太の指が圭の中で快感の種を探る。
「ぁ、アッ…… ! 」
他愛もなく探り当てられてしまった種がジクジクと疼きだし、圭は背中を反り返らせて小さな声を上げる。
と、その時、圭の脳裏に旭の後姿が浮かんだ。
―― 旭くん…… !
圭はまるで自分が二人いるような奇妙な感覚に捉われていた。
旭を愛し、想い、世界が終わるまで、死が二人を別つまで、いつまでも大切に守っていきたいと望む自分と、蒼太を想い、慕って、地の果てまで、ついていきたいと思う自分。
永遠に相入れるコトの無い、正反対の二つの感情に責め立てられ、身動きすることさえ出来なくなっていく。
旭も、蒼太も、ココで手を離したらもう二度と一緒に歩くコトは出来ないのだ…… 。
蒼太は、涙目で首を振る圭の反応を楽しむように意地悪く指先をくねらせていく、そしてその度にビクビク震える圭を翻弄していた。
指先は二本、三本と増やされ、圭の秘孔を押し広げていく。
そして長い時間をかけ、壷の中に仕舞い込み、隠し続けていた秘密を暴きたてる。
圭がいつか、図らずも自分でも心配していたように、押し殺し、忘れたフリをしていた甘い想いは年月を経て発酵し、今、圭を、そして蒼太を酔わせる美酒に変わっていた。
「あっ、ァ、もうアカンです、先輩…… ! 」
追い詰められた圭が悲鳴を上げる。
「アホ、これからやろ、勝手にイクんは許さへんからな、」
冷たく、なのにどこか優しい蒼太の声がカラッポの頭の中に響いている。
蒼太はガクガクと震える圭の雄蕊を固く掴んで射精を阻んでから、おもむろに息を吐いた。
「ココからが本番やないか、キッチリ堪えてろ、ええな? 」
コレを受け入れたらそこで終りだ。
久しぶりの再会なんだから、ゆっくり話したいコトもあるでしょう? いいから行ってきなと、蒼太の元へ行くことを許してくれた心優しい旭に合わせる顔がなくなる。
そう頭の隅で思いながら、圭は魔法のような蒼太の冷たく優しい声に逆らうコトが出来ず、小さく頷いた。
「ハ…… イ、」
――――――――
「……圭くん、」
圭が去って行ったあと、暫くのあいだ、呆然としていた旭は、やがてゆっくりと顔を上げ、ポケットの中の携帯を取り出した。
そして見知った番号を押す。
短いコール音のアト、相手が出た。
『旭か? どうした、めずらしいな、』
「あ飛田さん? 良かった、起きてたんだ、」
『何言ってやがる、まだ十一時だぜ、宵の口じゃねえかよ』
「そっか、……ね、今から会えない? 飲みたいんだ、付き合ってよ、」
『贅沢な奴だな、彼氏と喧嘩でもしたか? ……まあいい、いつもの店にいんからよ、気が向いたらきな、三時頃まではいるからよ、』
「うん、ありがとう、すぐ行くね、」
旭はホッとしたようにそう答えると、閉じた携帯をジッと見つめ、電源を落してからポケットにしまった。
今夜はもう、万が一にも蒼太の元へ向かう圭の声を聞きたくないと思ったからだ。
圭と、蒼太があってどうなるのか、さっき休憩中に見た限りでは、その後の展開が容易に想像できるような気がする。
そして、まさか…… という思いを隠し、圭に返しそびれていた蒼太の店のレシートを見つめて、また鞄の中へしまいこんだ。
圭くん、ゴメンね。
やっぱり今日はあんまり食べれないかもしれない。
少し飲んじゃうし、相手は飛田さんだけど、でもちょっとだけだから…… 。
心の中で旭は、そう独り言のような言い訳をして、飛田の待つ店へ急いでいった。
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恋する詩神 79
― スロウレイン 7 ―
著:アキト
旭と別れ、テレビ局からタクシーに乗ったところで気がついた。
(あの紙、旭くんが持ったままや・・・)
引き返そうかとも思ったが、なんとなくばつが悪い。蒼太の東京での住所の場所はぼんやりと覚えてはいたが、携帯の番号は全く覚えていなかった。
とりあえずその住所付近を目的地として運転手に告げる。
(着いてから・・・旭くんに携帯で先輩の番号を聞くしかないか)
圭は大きく息を吐くと、窓の外に流れていく景色を眺めた。
(旭くんに『会ってきていいよ』って言われた時は、わだかまりなく蒼太先輩に会えると思て嬉しかったのに・・・なんやろ。なんか旭くんにすごく申し訳ない気がする・・・別に浮気のつもりはないし、ただ会って話するだけやっちゅうのに。これからは蒼太先輩のこと、旭くんにあんまり言わん方がええんかもなぁ)
そんなことを何度も頭の中で考えているうちに、タクシーは目的地に到着した。支払いを済ませ、車を降りる。
「さて。どないしよ・・・」
まず旭の携帯に電話をかけてみる。
辺りを見回してみても初めて来る場所で土地勘が全くなかった。
その上、人影はひとつもない。
しばらく呼び出し音が続くが、旭が出る気配はなかった。
「なんで出ぇへんねん・・・はぁ」
溜息と共に旭への電話を諦める。
携帯の画面に浮かび上がっている時刻は午後11時55分。
蒼太は零時前には帰宅していると書いてあった・・・。
「先輩、もう帰ってるんやろか。っていうか、もしかして会われへんのんちゃうか〜」
夜中の見知らぬ場所でひとり、悲壮感が漂う。
(おかしいなぁ、俺、超売れっ子アイドルとちゃうかったっけ? あの人気は人がおって成り立つもんで、今みたいに誰もおらん所ではアイドルという肩書きは無意味なんやなぁ・・・)
仕方なく周囲を探索してみようと思い、とぼとぼと力なく歩いてみる。
その横を車が一台過ぎ去って行った。
「おう! 何しとんねん! こっちやで!」
突然聞き慣れた声が聞こえ、咄嗟に振り返るとそこに蒼太が立っていた。
「なんやの、このディスティニー・・・」
圭が独り言を漏らすと、蒼太が胡散臭そうに首を傾けて「あ?」と言った。
「ちょっと後片付けが長引いてしもてな、ほれ、あのタクシーで今帰ってきたんや。何? おまえ、俺んとこに来たんとちゃうんか?」
「き、来たんです。先輩んとこに来たんです」
「あいかわらず目が離せんガキやな〜。どこに行く気やったんや〜」
嘲笑混じりの蒼太のからかい口調も何故か心地良い。
圭は蒼太の横に並び一緒に蒼太の部屋へ向かった。
「売れっ子アイドルの部屋に比べたら狭いやろけどな、まあ上がり」
「お、お邪魔します〜」
蒼太の部屋に入った瞬間、圭の体はきゅんと引き締まったような気がした。
セブンスターとハイビスカスの匂いがする。
無駄な物は何一つなく、更正した蒼太の生活が窺われた。
「今日の番組まで大阪とこっちの往復でな、ほとんどここで寝てなかったんやけど・・・無事に終わってよかったわ」
上着を脱ぎながら蒼太が部屋の照明を付ける。
靴を脱いで部屋の中に足を踏み入れると、鼻先に流れる部屋の・・・蒼太の香りが懐かしさと共に愛しさをも思い出させた。
「おまえも番組終わってそのままこっちに来たんやろ? 腹減ってないか? おまえ、あんまり食ってなかったみたいやし」
蒼太が冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出す。
圭はここに来てはみたものの、一体何を話せばいいのかわからず、ただ黙って立ち尽くしていた。
「ほら、おまえも・・・って、なんや? どないしたん?」
差し出しかけた缶ビールをテーブルの上に置き、蒼太は圭の言葉を待っている。
圭は蒼太を見つめた。
「俺、ずっと心配で、でもどないもできへんかって・・・まだ先輩がここにおるのが信じられへんっていうか・・・」
「ははは、ほんなら触ってみたらええんちゃう?」
「え?」
「昔みたいに」
蒼太が口の端を上げる。
(誘われてるんか・・・?)
圭はどう返事をすればいいのか戸惑い、下を向いた。
「まあそれにしても、倉橋くん、おまえがここに来ることよう許してくれたなぁ。本人は誤魔化してたつもりやろうけど、思いっきり敵視されとったから今日はアカンと思とったのに」
「・・・旭くんが、久しぶりで積もる話もあるやろう言うて行かせてくれたんです」
「ほんで? おまえは恋人ほっといて、喜んでここに来たんか。俺に会いに」
「ほっといてってわけじゃ、なぃ・・・」
反論しようと思い顔を上げると同時に、圭は両腕を掴まれ、強引に唇を合わされる。
「・・・ん、んん」
拒もうと腕に力を入れても蒼太にはかないそうにない。
蒼太の舌が、口中の上あごをなぞり、舌先を吸い上げる。
くすぐったいような感覚から、全身にゾクリと痺れが走り、呼吸が乱れた。
「ン、ん・・」
自分の全てを知られているということが、こんなにも甘い誘惑を孕んで自分を責め立てるとは思わなかった。
両腕の力も次第に緩み、その手は蒼太にしがみつくことに夢中になる。
好きだった。
いつまでもそばにいたいと思っていた。
一生、この人だけだと・・・思っていた。
「せんぱ、い」
ようやく解放された圭が、ぼんやりと蒼太の目を見つめる。
すると蒼太は左手で圭の腰を引き寄せ、右手で圭の頬を包んだ。
温かい、蒼太の手。
あの頃と何も変わらない。
「なんでうっとりしてんねん。不誠実なやっちゃな」
流されそうになりながら、圭は思った。
もし、蒼太と離れることにならずに今も一緒にいたとしたら?
でもそれは「もしも」の話だ。
自分には今、旭がいる。
誰よりも大切にしたい旭が。
ここで流されてはいけない。
(流されたら、旭くんと終わってしまう・・・)
だけどもし、今、蒼太が自分を望んだとしたら?
「先輩、俺」
圭が抗う前に、蒼太がより強く圭を抱き寄せる。
「圭、言わんでもええ。明日のことは考えんな」
蒼太の落ち着いた低い声が圭の思考を掻き乱す。
どういう意味なのか、蒼太が本心を語る前に悟らなければならない。
しかし、頭で考えるよりも先に体が蒼太の誘いに応えていた。
(どうしよう・・・抗われへん・・・)
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著:アキト
旭と別れ、テレビ局からタクシーに乗ったところで気がついた。
(あの紙、旭くんが持ったままや・・・)
引き返そうかとも思ったが、なんとなくばつが悪い。蒼太の東京での住所の場所はぼんやりと覚えてはいたが、携帯の番号は全く覚えていなかった。
とりあえずその住所付近を目的地として運転手に告げる。
(着いてから・・・旭くんに携帯で先輩の番号を聞くしかないか)
圭は大きく息を吐くと、窓の外に流れていく景色を眺めた。
(旭くんに『会ってきていいよ』って言われた時は、わだかまりなく蒼太先輩に会えると思て嬉しかったのに・・・なんやろ。なんか旭くんにすごく申し訳ない気がする・・・別に浮気のつもりはないし、ただ会って話するだけやっちゅうのに。これからは蒼太先輩のこと、旭くんにあんまり言わん方がええんかもなぁ)
そんなことを何度も頭の中で考えているうちに、タクシーは目的地に到着した。支払いを済ませ、車を降りる。
「さて。どないしよ・・・」
まず旭の携帯に電話をかけてみる。
辺りを見回してみても初めて来る場所で土地勘が全くなかった。
その上、人影はひとつもない。
しばらく呼び出し音が続くが、旭が出る気配はなかった。
「なんで出ぇへんねん・・・はぁ」
溜息と共に旭への電話を諦める。
携帯の画面に浮かび上がっている時刻は午後11時55分。
蒼太は零時前には帰宅していると書いてあった・・・。
「先輩、もう帰ってるんやろか。っていうか、もしかして会われへんのんちゃうか〜」
夜中の見知らぬ場所でひとり、悲壮感が漂う。
(おかしいなぁ、俺、超売れっ子アイドルとちゃうかったっけ? あの人気は人がおって成り立つもんで、今みたいに誰もおらん所ではアイドルという肩書きは無意味なんやなぁ・・・)
仕方なく周囲を探索してみようと思い、とぼとぼと力なく歩いてみる。
その横を車が一台過ぎ去って行った。
「おう! 何しとんねん! こっちやで!」
突然聞き慣れた声が聞こえ、咄嗟に振り返るとそこに蒼太が立っていた。
「なんやの、このディスティニー・・・」
圭が独り言を漏らすと、蒼太が胡散臭そうに首を傾けて「あ?」と言った。
「ちょっと後片付けが長引いてしもてな、ほれ、あのタクシーで今帰ってきたんや。何? おまえ、俺んとこに来たんとちゃうんか?」
「き、来たんです。先輩んとこに来たんです」
「あいかわらず目が離せんガキやな〜。どこに行く気やったんや〜」
嘲笑混じりの蒼太のからかい口調も何故か心地良い。
圭は蒼太の横に並び一緒に蒼太の部屋へ向かった。
「売れっ子アイドルの部屋に比べたら狭いやろけどな、まあ上がり」
「お、お邪魔します〜」
蒼太の部屋に入った瞬間、圭の体はきゅんと引き締まったような気がした。
セブンスターとハイビスカスの匂いがする。
無駄な物は何一つなく、更正した蒼太の生活が窺われた。
「今日の番組まで大阪とこっちの往復でな、ほとんどここで寝てなかったんやけど・・・無事に終わってよかったわ」
上着を脱ぎながら蒼太が部屋の照明を付ける。
靴を脱いで部屋の中に足を踏み入れると、鼻先に流れる部屋の・・・蒼太の香りが懐かしさと共に愛しさをも思い出させた。
「おまえも番組終わってそのままこっちに来たんやろ? 腹減ってないか? おまえ、あんまり食ってなかったみたいやし」
蒼太が冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出す。
圭はここに来てはみたものの、一体何を話せばいいのかわからず、ただ黙って立ち尽くしていた。
「ほら、おまえも・・・って、なんや? どないしたん?」
差し出しかけた缶ビールをテーブルの上に置き、蒼太は圭の言葉を待っている。
圭は蒼太を見つめた。
「俺、ずっと心配で、でもどないもできへんかって・・・まだ先輩がここにおるのが信じられへんっていうか・・・」
「ははは、ほんなら触ってみたらええんちゃう?」
「え?」
「昔みたいに」
蒼太が口の端を上げる。
(誘われてるんか・・・?)
圭はどう返事をすればいいのか戸惑い、下を向いた。
「まあそれにしても、倉橋くん、おまえがここに来ることよう許してくれたなぁ。本人は誤魔化してたつもりやろうけど、思いっきり敵視されとったから今日はアカンと思とったのに」
「・・・旭くんが、久しぶりで積もる話もあるやろう言うて行かせてくれたんです」
「ほんで? おまえは恋人ほっといて、喜んでここに来たんか。俺に会いに」
「ほっといてってわけじゃ、なぃ・・・」
反論しようと思い顔を上げると同時に、圭は両腕を掴まれ、強引に唇を合わされる。
「・・・ん、んん」
拒もうと腕に力を入れても蒼太にはかないそうにない。
蒼太の舌が、口中の上あごをなぞり、舌先を吸い上げる。
くすぐったいような感覚から、全身にゾクリと痺れが走り、呼吸が乱れた。
「ン、ん・・」
自分の全てを知られているということが、こんなにも甘い誘惑を孕んで自分を責め立てるとは思わなかった。
両腕の力も次第に緩み、その手は蒼太にしがみつくことに夢中になる。
好きだった。
いつまでもそばにいたいと思っていた。
一生、この人だけだと・・・思っていた。
「せんぱ、い」
ようやく解放された圭が、ぼんやりと蒼太の目を見つめる。
すると蒼太は左手で圭の腰を引き寄せ、右手で圭の頬を包んだ。
温かい、蒼太の手。
あの頃と何も変わらない。
「なんでうっとりしてんねん。不誠実なやっちゃな」
流されそうになりながら、圭は思った。
もし、蒼太と離れることにならずに今も一緒にいたとしたら?
でもそれは「もしも」の話だ。
自分には今、旭がいる。
誰よりも大切にしたい旭が。
ここで流されてはいけない。
(流されたら、旭くんと終わってしまう・・・)
だけどもし、今、蒼太が自分を望んだとしたら?
「先輩、俺」
圭が抗う前に、蒼太がより強く圭を抱き寄せる。
「圭、言わんでもええ。明日のことは考えんな」
蒼太の落ち着いた低い声が圭の思考を掻き乱す。
どういう意味なのか、蒼太が本心を語る前に悟らなければならない。
しかし、頭で考えるよりも先に体が蒼太の誘いに応えていた。
(どうしよう・・・抗われへん・・・)
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― スロウレイン 6 ―
著:葉邑桐也
圭の右手を握ったまま、旭はすたすたとAスタジオへ急ぐ、その背中からは、なにかとても刺々しさのあるオーラを感させた。
「ァ、旭くん、なんか食べよりましたか? 」
「……食べて無いよ」
無愛想にそう答えた旭はあきらかに怒っていそうで、圭のほうに振り向きもしなかった。
待たせた挙句に、蒼太と話しているところを見られ、まるで年上の奥さんに浮気現場を押さえられた亭主のような気分になった。
(いや、断じて浮気ではないし、旭が女性ではないコトも百も承知だが……)
「あの…… なんかありましたか? 」
「なにもないよ、」
ああ、あったんですね?
旭は不機嫌そうに、というより少し泣きそうな顔でプイと横を向いて答えてくる、それはとてもわかりやすい反応で、きっと待ち時間に会いたくない人に会ったか、苦手なタイプに絡まれたんだろうなと推察できた。
「スンマセン、すぐ戻る気やったんですが、まさかあないなトコの先輩がおるなんて思わんかったんで、つい長話になってしもうて…… 」
「べつにいいよ、大事な人なでしょ、仕方ないよ」
旭は柔らかい口調でそう言ってくれたが、面白くないと思っているらしいのは直ぐにわかる、その証拠にまだ圭の目を見ない。
このまま、こんな気まずい雰囲気のまま離れたくない、圭は自分の手を引いて歩いている旭の手をグイと引き返し、その場に立ち止らせて真正面から旭を見た。
そして軽く頭を下げてから、真剣な目で旭を見つめる。
「いえ、ほんまにスンマセン、直ぐ戻る言うたに守れんかった俺が悪いです、でも俺、旭くんより大事な人なんておりませんから、ホンマですよ」
もう一度、謝罪すると、旭はフウと小さく息を吐いた。
そして今度は本当に笑いながら、圭の頬にチュッと音を立ててキスをした。
「もういいよ、俺もそんなにお腹空いてたわけじゃないし、番組終わったら改めて二人でなんか食べに行こ、奢ってくれるんでしょ? 」
「あ、はい! そりゃもう、絶対ですよ、」
旭の機嫌が少し浮上してきたところでAスタジオに到着してしまったので、じゃあ後でねと手をふって別々の席に着いた。
しかし、番組も終了し、帰り支度を済ます頃、圭はどんよりと落ち込んでいた。
なにか美味しいものでも食べにいきましょうね、などと言っておいて、結局後半はイイトコなしで、終わってしまったからだ。
原因は至極はっきりしている、休憩タイムの最後に囁かれた。
「奪いに来たで、圭」
と言う蒼太の言葉が頭の中でグルグルまわり、もう番組どころではなかったからだ。
奪いにきた、とは文字通りの意味でとれば、また一緒になろう、共に歩こうと言うことになるのだが、まさか蒼太がそんなコトを言うとも思えなかった。
追いかけるのはいつでも自分のほうで、蒼太はいつもアトをついてくる自分を待つことさえしなかった。
そのくせ当たり前のように抱きすくめられ、なんども熱い身体を繋ぎあった。
親に、世間に背を向けて、あの頃は、本当に蒼太となら死んでもいいと思っていた。
「あ、アカン、こんなコト考えとる場合か」
初めて抱かれた夜を思い出し、ボウッとしそうになった圭は思わず、そう口に出し、慌てて首をふった。
そしてふと、別れ際に蒼太に手渡されていた紙切れの存在を思いだした。
あのアト、直ぐに番組後半が始まってしまい、旭もそばにいたので、結局何が書かれているのか見ることが出来なかったものだ。
旭は帰り際、番組関係者に呼ばれ、次回の仕事についての確認を受けているところで、まだ現れない、圭は少々後ろめたい気分を引きずりながら、その紙切れをソッと、ズボンのポケットから取り出して見た。
『 蒼海 』
と、書かれたレシート。
ソコには店の住所と電話番号が書かれてある、住所は大阪だった。
蒼太先輩、ホンマに頑張っとるんやな、大阪に行った時は絶対寄らさして貰いますわ…… そう思ってそのレシートをしまおうとした時、その裏に、ボールペンでなにか走り書きしてあるのを見つけた。
「…… 」
そこには蒼太の東京での住所と、携帯番号、そして短いメッセージが添えられていた。
―― 大抵零時前には家に戻っとる ――
蒼太は多くを語らない、その代わり謎はたくさんかけてくる、圭はいつもその謎を解かなければならなかった。
中学入学から、高校卒業までの六年間、ずっと一緒にいたというわけではないが、殆んどの時間を蒼太と過ごした。
同級生や親なんかよりもよっぽど多くの時間を蒼太と生きた。
長年の習性というモノはそうそう簡単には抜けないものだ。
圭には蒼太の言いたいコトが直ぐにわかってしまった。
それは、今日、直ぐに、家へ来いという意味だ。
だがそれは出来ない相談というモノだ。
今日は旭が一緒だし、自分が待たせてしまったせいで結局休憩時間になにも食べられなかった旭に奢ると約束している。
すんません先輩、今夜は無理ですわ…… メモ書きのあるレシートを見つめ、心の中でそう謝罪する圭の横でフイに旭の声がした。
「どうしたの? 圭くん、なに見てんの? 」
「あ、イヤ、なんも見とりませんよ、話、終わったんですか? 」
「うん、もうすんだ」
「じゃ、帰りましょうか、なんか食べますやろ? 」
そう言って慌てて歩き出した圭は、たぶん気が動転していたのだろう、ポケットにしまったつもりでいたレシートはヒラリと床に落ちた。
先に立ってあるく圭がそれに気付く前に、旭がソレを拾う、そしてその走り書きをジッと見ていた。
「…… 」
いつまで経っても歩き出さない旭に圭が不信そうに振り向くと、旭はそのレシートを無表情に見つめていた。
「あ、旭くん、ソレ…… !! 」
驚いてつい大声になると、旭は無表情のまま顔を上げた。
「蒼太さんと待ち合わせでもしてた? いいよ、行ってきても…… 」
「や、そうはいかへんですよ、今日は旭くんとご飯食べ行くて約束やし…… あの、」
後ろめたさに早口になりながら思わずそう言い繕うと、旭は綺麗な顔でニッコリと微笑んだ。
「食事はまた今度にしよう、蒼太さんとは久しぶりなんでしょう? 」
「あ、まあ…… 」
「何年ぶりなの? 」
「高校卒業以来やから、最後に会うたんは、かれこれ五〜六年前と思いますけど…… でも、俺は、」
旭くんのが大事です、……圭が慌ててそう言いかけた時、旭は圭の唇を指でソッと押さえ、ニコッと笑ってかるく首をかしげてみせた。
そして子どもに言い聞かせるような口調で告げたのだ。
「だめ、行ってきな、そんなに久しぶりなら積もる話もあるでしょう? 蒼太さんだってきっとそうだと思うよ、」
「でも、それやったら旭くんはどないするんです」
「俺? 俺はいいよ、一人でもちゃんと食べれるし、蒼太さんは圭くんのお世話になった人なんでしょう、行ってきな、ね? 」
「そんなコト言うて、旭くん一人やったら、酒しか補給せんやないですか! そうはいかへんですよ、」
そう詰め寄ると、旭は少し困った顔で首をかしげながらさらに圭を促した。
「今日はちゃんと食べる、約束するよ、だからね? 行ってきな」
「なんでですか、なんでそんな行け言うんです、俺とおるの嫌や言う気ですか? 」
旭があまり強く勧めるので、圭はまるで旭に追い払われているかのような気がして泣きそうになった。
だが旭は真剣な表情で圭を見て申し訳なさそうに口を開いた。
「そうじゃないよ、ただ俺さっきは大人気なかったなって思って…… 圭くんの恩人なのに、お世話になった先輩なのに、あんな露骨な態度とっちゃって、蒼太さんだって久しぶりなんだもの、きっともっとゆっくり話したかったんじゃないかな? だから、ね? 気にしないでいいから行ってよ、じゃないと、俺の気がすまないし…… 」
「でも、旭くん…… ! 」
それでも躊躇う圭の手をとって、旭は優しく微笑みかけた、出来るだけ、圭に気兼ねをさせたくなかったのだ。
「今日はちゃんと食べて、早く寝る、約束するよ、だから、ね? 行ってあげて? 」
「わかりました、じゃ約束ですよ、ちゃんと食べてくださいよ、酒、あんまり飲んだらアカンですよ? 」
「うん、大丈夫、約束します、」
圭は、たぶん内心ホッとしたのだろう、心なしか浮き足立って見える。
昔世話になったと言う先輩の誘いを無碍に断れないのは当然だ。
本当は行きたかった違いない。
ここで旭が行かないでと止めれば行かないだろうが、きっと、心は残したままだ。
一緒にいる間中、ずっと別の男のことを考えてる圭を目の前にしているよりは、行かせたほうが全然マシだろうと思われた。
「じゃ、すんません旭くん、この埋め合わせは必ずしますよって、……ありがとうございます! 」
「そんなコトいいから、楽しんでおいで、じゃね、オヤスミ! 」
そう言って軽く手を振ると、圭はもう後も見ずに走り去って行った。
後に残された旭は、圭の後姿が見えなくなってから静かに深い溜息をつく、圭に言ったコトの半分は本心だ、だがアトの半分は…… 。
「……圭くん」
頼りなくそう呟く旭の声が、人気のなくなったロビーに小さく響いていた。
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著:葉邑桐也
圭の右手を握ったまま、旭はすたすたとAスタジオへ急ぐ、その背中からは、なにかとても刺々しさのあるオーラを感させた。
「ァ、旭くん、なんか食べよりましたか? 」
「……食べて無いよ」
無愛想にそう答えた旭はあきらかに怒っていそうで、圭のほうに振り向きもしなかった。
待たせた挙句に、蒼太と話しているところを見られ、まるで年上の奥さんに浮気現場を押さえられた亭主のような気分になった。
(いや、断じて浮気ではないし、旭が女性ではないコトも百も承知だが……)
「あの…… なんかありましたか? 」
「なにもないよ、」
ああ、あったんですね?
旭は不機嫌そうに、というより少し泣きそうな顔でプイと横を向いて答えてくる、それはとてもわかりやすい反応で、きっと待ち時間に会いたくない人に会ったか、苦手なタイプに絡まれたんだろうなと推察できた。
「スンマセン、すぐ戻る気やったんですが、まさかあないなトコの先輩がおるなんて思わんかったんで、つい長話になってしもうて…… 」
「べつにいいよ、大事な人なでしょ、仕方ないよ」
旭は柔らかい口調でそう言ってくれたが、面白くないと思っているらしいのは直ぐにわかる、その証拠にまだ圭の目を見ない。
このまま、こんな気まずい雰囲気のまま離れたくない、圭は自分の手を引いて歩いている旭の手をグイと引き返し、その場に立ち止らせて真正面から旭を見た。
そして軽く頭を下げてから、真剣な目で旭を見つめる。
「いえ、ほんまにスンマセン、直ぐ戻る言うたに守れんかった俺が悪いです、でも俺、旭くんより大事な人なんておりませんから、ホンマですよ」
もう一度、謝罪すると、旭はフウと小さく息を吐いた。
そして今度は本当に笑いながら、圭の頬にチュッと音を立ててキスをした。
「もういいよ、俺もそんなにお腹空いてたわけじゃないし、番組終わったら改めて二人でなんか食べに行こ、奢ってくれるんでしょ? 」
「あ、はい! そりゃもう、絶対ですよ、」
旭の機嫌が少し浮上してきたところでAスタジオに到着してしまったので、じゃあ後でねと手をふって別々の席に着いた。
しかし、番組も終了し、帰り支度を済ます頃、圭はどんよりと落ち込んでいた。
なにか美味しいものでも食べにいきましょうね、などと言っておいて、結局後半はイイトコなしで、終わってしまったからだ。
原因は至極はっきりしている、休憩タイムの最後に囁かれた。
「奪いに来たで、圭」
と言う蒼太の言葉が頭の中でグルグルまわり、もう番組どころではなかったからだ。
奪いにきた、とは文字通りの意味でとれば、また一緒になろう、共に歩こうと言うことになるのだが、まさか蒼太がそんなコトを言うとも思えなかった。
追いかけるのはいつでも自分のほうで、蒼太はいつもアトをついてくる自分を待つことさえしなかった。
そのくせ当たり前のように抱きすくめられ、なんども熱い身体を繋ぎあった。
親に、世間に背を向けて、あの頃は、本当に蒼太となら死んでもいいと思っていた。
「あ、アカン、こんなコト考えとる場合か」
初めて抱かれた夜を思い出し、ボウッとしそうになった圭は思わず、そう口に出し、慌てて首をふった。
そしてふと、別れ際に蒼太に手渡されていた紙切れの存在を思いだした。
あのアト、直ぐに番組後半が始まってしまい、旭もそばにいたので、結局何が書かれているのか見ることが出来なかったものだ。
旭は帰り際、番組関係者に呼ばれ、次回の仕事についての確認を受けているところで、まだ現れない、圭は少々後ろめたい気分を引きずりながら、その紙切れをソッと、ズボンのポケットから取り出して見た。
『 蒼海 』
と、書かれたレシート。
ソコには店の住所と電話番号が書かれてある、住所は大阪だった。
蒼太先輩、ホンマに頑張っとるんやな、大阪に行った時は絶対寄らさして貰いますわ…… そう思ってそのレシートをしまおうとした時、その裏に、ボールペンでなにか走り書きしてあるのを見つけた。
「…… 」
そこには蒼太の東京での住所と、携帯番号、そして短いメッセージが添えられていた。
―― 大抵零時前には家に戻っとる ――
蒼太は多くを語らない、その代わり謎はたくさんかけてくる、圭はいつもその謎を解かなければならなかった。
中学入学から、高校卒業までの六年間、ずっと一緒にいたというわけではないが、殆んどの時間を蒼太と過ごした。
同級生や親なんかよりもよっぽど多くの時間を蒼太と生きた。
長年の習性というモノはそうそう簡単には抜けないものだ。
圭には蒼太の言いたいコトが直ぐにわかってしまった。
それは、今日、直ぐに、家へ来いという意味だ。
だがそれは出来ない相談というモノだ。
今日は旭が一緒だし、自分が待たせてしまったせいで結局休憩時間になにも食べられなかった旭に奢ると約束している。
すんません先輩、今夜は無理ですわ…… メモ書きのあるレシートを見つめ、心の中でそう謝罪する圭の横でフイに旭の声がした。
「どうしたの? 圭くん、なに見てんの? 」
「あ、イヤ、なんも見とりませんよ、話、終わったんですか? 」
「うん、もうすんだ」
「じゃ、帰りましょうか、なんか食べますやろ? 」
そう言って慌てて歩き出した圭は、たぶん気が動転していたのだろう、ポケットにしまったつもりでいたレシートはヒラリと床に落ちた。
先に立ってあるく圭がそれに気付く前に、旭がソレを拾う、そしてその走り書きをジッと見ていた。
「…… 」
いつまで経っても歩き出さない旭に圭が不信そうに振り向くと、旭はそのレシートを無表情に見つめていた。
「あ、旭くん、ソレ…… !! 」
驚いてつい大声になると、旭は無表情のまま顔を上げた。
「蒼太さんと待ち合わせでもしてた? いいよ、行ってきても…… 」
「や、そうはいかへんですよ、今日は旭くんとご飯食べ行くて約束やし…… あの、」
後ろめたさに早口になりながら思わずそう言い繕うと、旭は綺麗な顔でニッコリと微笑んだ。
「食事はまた今度にしよう、蒼太さんとは久しぶりなんでしょう? 」
「あ、まあ…… 」
「何年ぶりなの? 」
「高校卒業以来やから、最後に会うたんは、かれこれ五〜六年前と思いますけど…… でも、俺は、」
旭くんのが大事です、……圭が慌ててそう言いかけた時、旭は圭の唇を指でソッと押さえ、ニコッと笑ってかるく首をかしげてみせた。
そして子どもに言い聞かせるような口調で告げたのだ。
「だめ、行ってきな、そんなに久しぶりなら積もる話もあるでしょう? 蒼太さんだってきっとそうだと思うよ、」
「でも、それやったら旭くんはどないするんです」
「俺? 俺はいいよ、一人でもちゃんと食べれるし、蒼太さんは圭くんのお世話になった人なんでしょう、行ってきな、ね? 」
「そんなコト言うて、旭くん一人やったら、酒しか補給せんやないですか! そうはいかへんですよ、」
そう詰め寄ると、旭は少し困った顔で首をかしげながらさらに圭を促した。
「今日はちゃんと食べる、約束するよ、だからね? 行ってきな」
「なんでですか、なんでそんな行け言うんです、俺とおるの嫌や言う気ですか? 」
旭があまり強く勧めるので、圭はまるで旭に追い払われているかのような気がして泣きそうになった。
だが旭は真剣な表情で圭を見て申し訳なさそうに口を開いた。
「そうじゃないよ、ただ俺さっきは大人気なかったなって思って…… 圭くんの恩人なのに、お世話になった先輩なのに、あんな露骨な態度とっちゃって、蒼太さんだって久しぶりなんだもの、きっともっとゆっくり話したかったんじゃないかな? だから、ね? 気にしないでいいから行ってよ、じゃないと、俺の気がすまないし…… 」
「でも、旭くん…… ! 」
それでも躊躇う圭の手をとって、旭は優しく微笑みかけた、出来るだけ、圭に気兼ねをさせたくなかったのだ。
「今日はちゃんと食べて、早く寝る、約束するよ、だから、ね? 行ってあげて? 」
「わかりました、じゃ約束ですよ、ちゃんと食べてくださいよ、酒、あんまり飲んだらアカンですよ? 」
「うん、大丈夫、約束します、」
圭は、たぶん内心ホッとしたのだろう、心なしか浮き足立って見える。
昔世話になったと言う先輩の誘いを無碍に断れないのは当然だ。
本当は行きたかった違いない。
ここで旭が行かないでと止めれば行かないだろうが、きっと、心は残したままだ。
一緒にいる間中、ずっと別の男のことを考えてる圭を目の前にしているよりは、行かせたほうが全然マシだろうと思われた。
「じゃ、すんません旭くん、この埋め合わせは必ずしますよって、……ありがとうございます! 」
「そんなコトいいから、楽しんでおいで、じゃね、オヤスミ! 」
そう言って軽く手を振ると、圭はもう後も見ずに走り去って行った。
後に残された旭は、圭の後姿が見えなくなってから静かに深い溜息をつく、圭に言ったコトの半分は本心だ、だがアトの半分は…… 。
「……圭くん」
頼りなくそう呟く旭の声が、人気のなくなったロビーに小さく響いていた。
NEXT. BACK.
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「親」の恋愛と夢を喰って「子ども」は大きくなったんだ。
熱弁ついでにもう一つ力説します。
(さっき書いた34歳はオバサンか? という事を考えてた時に脱線して考えちゃったコトです)
=============
私は10代前半、特に小学生までは、母親のことを女性だとは思ってはいませんでした。
母親は母親であり、私が生まれた時からずっと母親であったワケで、
母親でない母を知らなかったからでもあります。
一人の女性であるというコトどころか、父親の妻、奥様であるというコトにさえ、
考えが及ばなかったんですね。
母親は母親であり、父親は父親、あくまで親であり、夫でもなければ妻でもなく、
ましてや自分が生まれる前、恋人同士として付き合ったりもしたとは思ってもいなかったんですよ。
中学生になり、ある程度、そういうコトに理解をする余地が出てきた頃には、
母親が父親の妻であり、かつて二人は恋人同士であり、楽しい交際期間もあった
という事を知りました。
その時、普通の子どもはどう思うのかはわかりませんが、私はソレがなぜかとても
嬉しかったコトを覚えています。
でもそれは、母にもそういう青春があったんだという事に、単純にロマンを感じただけ
なのかもしれません。
高校卒業したばかりの頃、知り合い、当時はグループ交際で、母はその中で
一番口下手だった父を好きになったと聞きました。
海へ行ったり、山へ行ったり、遊園地へ行ったり、無口だった父はバイクの後ろに母を乗せ、
週末ごとに楽しませてくれたそうです。
長い交際期間中、大喧嘩して別れた時期もあったと聞きました。
その間、お互いに別々の恋をして、別々の恋人がいたりもしたそうで、そして何年か後、
最恋愛、その詳しい経緯までは聞きませんでしたが、なんか凄くドラマを感じました。
『ああ、お母さんも、女の子だったんだ、お父さんも男だったんだな』
と、嬉しくなったことを覚えています。
でも、それでもそれは過去の話であり、今は妻でさえない、ただの母親だと思っていたんです。
高校に入り、自分の趣味を色々と目指し、追い求めるうちに、今度は母親の夢が気になりだしました。
若い時に、アレほどの大恋愛をした母は、それなりの夢を持っていたのではないか?
そう思ったんです。
母は、デザイナーになりたかったそうです。
洋服をデザインするあのデザイナーです。
私はその頃、美術部の活動から始まり、イラスト関係の各種学校へ進んでいました。
なのでその時も、『ああ、お母さんも同じ(ような)夢、持ってたんだ』
と感激して嬉しくなりました。
父と結婚してからも、私は全然覚えていませんが、母は私や父の洋服を自分でデザインし、
手作りしてくれていたそうです。
でもそれでも、それはソコまでのことで、夢はそこで終り、今はただの母親だ。
・・・と、思ってました。
馬鹿だったなぁと思います。
母は母親という名前の生き物じゃないんですよね。
妻という名の生き物でもないんです。
母は、三藤八重子(仮名)という名の一人の女性、
一人の人間なんですよ。
自分が母親の年齢に近づくにつれ、それがヒシヒシとわかってきました。
私は私だ。
10代を過ぎて、20代もとうに過ぎて、30代になっても、40代になっても、
50代になっても、60過ぎても、私は私だ。
○○ちゃんのお母さん。
△△さんの奥さん。
××家の嫁さん。
□□のお姑さん。
そんな名前で呼ばれたくないです。
でも、そう言いながらも、私は少なくとも20代までは、
母を母としか見ていなかったように思います。
子どものタメに無償の愛で尽くしてくれる「親」
その「親」から受けた恩は大きすぎて、とてもその恩に報いるコトは出来ないんです。
だから子どもは結婚し同じように「親」となった時、
それまで自分が「親」に受けてきた恩を返す意味も込めて我が子を愛するのかもしれません。
ごめんね、お母さん、そしてお父さん。
私はまだお母さんみたいになれないや・・・。
そして今までずっと私のお母さんでいてくれて、お父さんでいてくれてありがとう。
でも、今からでもまだまだ遅くないよ。
生きてる限り、夢を見ていいんだよ。
だから、もっと趣味を持って、自分を大切にして生きてください。
人生の最後に、もっとこうしたかった、ああしたかったと
後悔することの無いように、自分を生きてください。
私もきっとそうするから。
子どもは親の「夢」や「恋心」や「ときめき」を食べて大きくなるんです。
いまコレを読んでくれているあなたは「子ども」ですか? 「親」ですか? その両方ですか?
もしも、アナタが子どもなら、「親」も、アナタと同じ人間だとわかってください。
もしもアナタが「親」なら、世間でいう「いい親」になろうとしなくていいから、もっと自分も大切にしてください。
もしもアナタが「子ども」でもあり「親」でもあるなら・・・ もう相当な歳であろうアナタの「親」も
アナタと同じ人間であるとわかってください。
そして「子ども」は保護すべき者ですが、甘やかすものではないという事を考え、
歳相応に、自分でできる事は自分でさせてみてください。
そうして空いた時間を、アナタはアナタの好きなコトをする時間として使ってください。
親は子どもが出来た時点で、女は結婚した時点で、家に、夫に、舅姑に子どもに縛られ、
自分を生きるコトが罪悪のように言われるものだけど、それは決して罪悪じゃないです。
アナタも、そしてもちろんアナタの夫も、自分を生きていいんですよ。
もちろん相応の義務や、その分やらねばならないコトもあるかもしれませんが、
それさえキチンとやっていれば、アナタがアナタの楽しみの為に時間やお金を費やすことを
責める権利は誰にもないと思います。
(何事もやりすぎはダメですけどね)
私は70歳になっても、過ぎても、
好きな俳優や歌手、漫画などに熱中していられる自分でいたいと思います。
きっとそうでありたいです。
でも、そのためにはマズはお金と健康が欲しいな〜 っとねww
(°∀°)b
(さっき書いた34歳はオバサンか? という事を考えてた時に脱線して考えちゃったコトです)
=============
私は10代前半、特に小学生までは、母親のことを女性だとは思ってはいませんでした。
母親は母親であり、私が生まれた時からずっと母親であったワケで、
母親でない母を知らなかったからでもあります。
一人の女性であるというコトどころか、父親の妻、奥様であるというコトにさえ、
考えが及ばなかったんですね。
母親は母親であり、父親は父親、あくまで親であり、夫でもなければ妻でもなく、
ましてや自分が生まれる前、恋人同士として付き合ったりもしたとは思ってもいなかったんですよ。
中学生になり、ある程度、そういうコトに理解をする余地が出てきた頃には、
母親が父親の妻であり、かつて二人は恋人同士であり、楽しい交際期間もあった
という事を知りました。
その時、普通の子どもはどう思うのかはわかりませんが、私はソレがなぜかとても
嬉しかったコトを覚えています。
でもそれは、母にもそういう青春があったんだという事に、単純にロマンを感じただけ
なのかもしれません。
高校卒業したばかりの頃、知り合い、当時はグループ交際で、母はその中で
一番口下手だった父を好きになったと聞きました。
海へ行ったり、山へ行ったり、遊園地へ行ったり、無口だった父はバイクの後ろに母を乗せ、
週末ごとに楽しませてくれたそうです。
長い交際期間中、大喧嘩して別れた時期もあったと聞きました。
その間、お互いに別々の恋をして、別々の恋人がいたりもしたそうで、そして何年か後、
最恋愛、その詳しい経緯までは聞きませんでしたが、なんか凄くドラマを感じました。
『ああ、お母さんも、女の子だったんだ、お父さんも男だったんだな』
と、嬉しくなったことを覚えています。
でも、それでもそれは過去の話であり、今は妻でさえない、ただの母親だと思っていたんです。
高校に入り、自分の趣味を色々と目指し、追い求めるうちに、今度は母親の夢が気になりだしました。
若い時に、アレほどの大恋愛をした母は、それなりの夢を持っていたのではないか?
そう思ったんです。
母は、デザイナーになりたかったそうです。
洋服をデザインするあのデザイナーです。
私はその頃、美術部の活動から始まり、イラスト関係の各種学校へ進んでいました。
なのでその時も、『ああ、お母さんも同じ(ような)夢、持ってたんだ』
と感激して嬉しくなりました。
父と結婚してからも、私は全然覚えていませんが、母は私や父の洋服を自分でデザインし、
手作りしてくれていたそうです。
でもそれでも、それはソコまでのことで、夢はそこで終り、今はただの母親だ。
・・・と、思ってました。
馬鹿だったなぁと思います。
母は母親という名前の生き物じゃないんですよね。
妻という名の生き物でもないんです。
母は、三藤八重子(仮名)という名の一人の女性、
一人の人間なんですよ。
自分が母親の年齢に近づくにつれ、それがヒシヒシとわかってきました。
私は私だ。
10代を過ぎて、20代もとうに過ぎて、30代になっても、40代になっても、
50代になっても、60過ぎても、私は私だ。
○○ちゃんのお母さん。
△△さんの奥さん。
××家の嫁さん。
□□のお姑さん。
そんな名前で呼ばれたくないです。
でも、そう言いながらも、私は少なくとも20代までは、
母を母としか見ていなかったように思います。
子どものタメに無償の愛で尽くしてくれる「親」
その「親」から受けた恩は大きすぎて、とてもその恩に報いるコトは出来ないんです。
だから子どもは結婚し同じように「親」となった時、
それまで自分が「親」に受けてきた恩を返す意味も込めて我が子を愛するのかもしれません。
ごめんね、お母さん、そしてお父さん。
私はまだお母さんみたいになれないや・・・。
そして今までずっと私のお母さんでいてくれて、お父さんでいてくれてありがとう。
でも、今からでもまだまだ遅くないよ。
生きてる限り、夢を見ていいんだよ。
だから、もっと趣味を持って、自分を大切にして生きてください。
人生の最後に、もっとこうしたかった、ああしたかったと
後悔することの無いように、自分を生きてください。
私もきっとそうするから。
子どもは親の「夢」や「恋心」や「ときめき」を食べて大きくなるんです。
いまコレを読んでくれているあなたは「子ども」ですか? 「親」ですか? その両方ですか?
もしも、アナタが子どもなら、「親」も、アナタと同じ人間だとわかってください。
もしもアナタが「親」なら、世間でいう「いい親」になろうとしなくていいから、もっと自分も大切にしてください。
もしもアナタが「子ども」でもあり「親」でもあるなら・・・ もう相当な歳であろうアナタの「親」も
アナタと同じ人間であるとわかってください。
そして「子ども」は保護すべき者ですが、甘やかすものではないという事を考え、
歳相応に、自分でできる事は自分でさせてみてください。
そうして空いた時間を、アナタはアナタの好きなコトをする時間として使ってください。
親は子どもが出来た時点で、女は結婚した時点で、家に、夫に、舅姑に子どもに縛られ、
自分を生きるコトが罪悪のように言われるものだけど、それは決して罪悪じゃないです。
アナタも、そしてもちろんアナタの夫も、自分を生きていいんですよ。
もちろん相応の義務や、その分やらねばならないコトもあるかもしれませんが、
それさえキチンとやっていれば、アナタがアナタの楽しみの為に時間やお金を費やすことを
責める権利は誰にもないと思います。
(何事もやりすぎはダメですけどね)
私は70歳になっても、過ぎても、
好きな俳優や歌手、漫画などに熱中していられる自分でいたいと思います。
きっとそうでありたいです。
でも、そのためにはマズはお金と健康が欲しいな〜 っとねww
(°∀°)b
「34歳はオバサンか・・・?」
女は一体いくつからオバサンと呼ばれるようになるのか。
それは30代にかかった女性ならきっと誰でも一度は思うコトなんじゃないでしょうか?
普段は若い時のままのつもりでいて、そして考えもしないコトでも、何かの拍子に考えるんじゃないだろうか?
なんでそんなコトを言いだすのかと言いますと、昨日、WEB上で、。
『 私は今34歳の未婚女性です。
最近周りに自分より若い、それも一回り以上若い女の子が増えてきて、疎外感を覚えます。
何となく、皆から、おばさんには関係ない話よーって思われてるような気がするんです。
そこでお聞きしたいのですが、34歳はオバサンでしょうか? 』
という投稿相談を見かけたからです。
結論から言います。
それは貴女次第です!
若い子、特に10代女子は、自分がいつか30過ぎになるとはきっと本気では思って無いんじゃないかと思いますよ。
でもね、今10代の子も、いつかは30になり40になるんです。
その時になって、オバサンなのかどうかはその人の考え一つ、行動一つなんじゃないかな?
女性がいつからオバサンになるのか、その質問をした、現在34歳の誰かさん。
オバサンかお姉さんか、世間や周りの人の無責任な言い分はあるかもしれないけど、アナタが好きなものを好きと感じ、愛するモノを愛する心を持ち、そして夢を見続けるコトが出来るかぎり、アナタの青春は終わらないと思いますよ。
オバサンというのは、自分でオバサンだと思ったときからオバサンなんじゃないでしょうかね。
若い子(10代後半)でも、「ああ、もう直ぐ私もオバサン(20歳)だあ」とか言っている人はオバサンなんじゃないかな。
そう言えば、私の知ってる(と言ってもWEB上だけですが・・・)関ジャニ∞ファンの女の子、(自称)16歳、七架(なっか)が、コノ前こう言ったのですよ。
「私ももう直ぐ17歳かぁ・・・人生終わったなあ」
おいコラ!
喧嘩売ってんのか?!
キミが終わってるなら私は今頃墓の下だぞ!!
そうなのよ、つまりね、10代の考えるおばさん年齢と、20代の考えるおばさん年齢と、30代が考えるおばさん年齢は違うんですよ。
10代女子は24過ぎたらオバサンと考える(らしい)
20代女性は30過ぎたらオバサンと考える(んだよ、だいたい)
そして自分が30代にはいると、オバサンというのは45歳過ぎくらいからと考えるんですよ。
何故に45歳かと言うと、オバサン年齢を40歳に設定してしまうと、
なんとなく自分も直ぐになっちゃいそうで現実感があって怖いからんじゃないかなと・・・。
でもね、きっと自分が45歳になったらオバサンだなんて考えないんじゃないかな?
もちろん周りは35歳くらいからオバサンって思ってるかもしれないし、自分でもそう思ってる人は多いかもしれない。
私だって職場の20代の男の子からはオバサンと思われてるかもしれないし・・・
(いやきっと思われてるだろうww)
でもね、でもあえて言おう!
私はオバサンにはならないよ、30過ぎても40過ぎても、50過ぎても60になっても!!
私はオバサンにもオバアサンにもなんないからな!
相談を投稿していた34歳の貴女!!
34歳はオバサンじゃなよ、オバサンってのは、自分でオバサンだと思った時点でオバサンなんだよ。
もしも、周りが貴女をオバサンだと見ていると感じるなら、それは自分で自分をそう見えるようにしているからなんだよ。
黒木瞳(48歳)も、川島なお美(48歳)も、飯島直子(40歳)も、杉本彩(40歳)も、全然オバサンじゃないよ!
素敵なお姉さまだよ!
それにひきかえ、言っちゃなんだけど、25歳でもオバサンに見える人はいるぞ!
(むしろオジサンに見えたり?)
34歳の相談者さん、オバサンかお姉さんかは、気の持ちよう、
そして生き方次第ですよ、ええ本当に。
スイマセン、ちょっと力説しちゃいました。
だって身につまされるから・・・(爆)
それは30代にかかった女性ならきっと誰でも一度は思うコトなんじゃないでしょうか?
普段は若い時のままのつもりでいて、そして考えもしないコトでも、何かの拍子に考えるんじゃないだろうか?
なんでそんなコトを言いだすのかと言いますと、昨日、WEB上で、。
『 私は今34歳の未婚女性です。
最近周りに自分より若い、それも一回り以上若い女の子が増えてきて、疎外感を覚えます。
何となく、皆から、おばさんには関係ない話よーって思われてるような気がするんです。
そこでお聞きしたいのですが、34歳はオバサンでしょうか? 』
という投稿相談を見かけたからです。
結論から言います。
それは貴女次第です!
若い子、特に10代女子は、自分がいつか30過ぎになるとはきっと本気では思って無いんじゃないかと思いますよ。
でもね、今10代の子も、いつかは30になり40になるんです。
その時になって、オバサンなのかどうかはその人の考え一つ、行動一つなんじゃないかな?
女性がいつからオバサンになるのか、その質問をした、現在34歳の誰かさん。
オバサンかお姉さんか、世間や周りの人の無責任な言い分はあるかもしれないけど、アナタが好きなものを好きと感じ、愛するモノを愛する心を持ち、そして夢を見続けるコトが出来るかぎり、アナタの青春は終わらないと思いますよ。
オバサンというのは、自分でオバサンだと思ったときからオバサンなんじゃないでしょうかね。
若い子(10代後半)でも、「ああ、もう直ぐ私もオバサン(20歳)だあ」とか言っている人はオバサンなんじゃないかな。
そう言えば、私の知ってる(と言ってもWEB上だけですが・・・)関ジャニ∞ファンの女の子、(自称)16歳、七架(なっか)が、コノ前こう言ったのですよ。
「私ももう直ぐ17歳かぁ・・・人生終わったなあ」
おいコラ!
喧嘩売ってんのか?!
キミが終わってるなら私は今頃墓の下だぞ!!
そうなのよ、つまりね、10代の考えるおばさん年齢と、20代の考えるおばさん年齢と、30代が考えるおばさん年齢は違うんですよ。
10代女子は24過ぎたらオバサンと考える(らしい)
20代女性は30過ぎたらオバサンと考える(んだよ、だいたい)
そして自分が30代にはいると、オバサンというのは45歳過ぎくらいからと考えるんですよ。
何故に45歳かと言うと、オバサン年齢を40歳に設定してしまうと、
なんとなく自分も直ぐになっちゃいそうで現実感があって怖いからんじゃないかなと・・・。
でもね、きっと自分が45歳になったらオバサンだなんて考えないんじゃないかな?
もちろん周りは35歳くらいからオバサンって思ってるかもしれないし、自分でもそう思ってる人は多いかもしれない。
私だって職場の20代の男の子からはオバサンと思われてるかもしれないし・・・
(いやきっと思われてるだろうww)
でもね、でもあえて言おう!
私はオバサンにはならないよ、30過ぎても40過ぎても、50過ぎても60になっても!!
私はオバサンにもオバアサンにもなんないからな!
相談を投稿していた34歳の貴女!!
34歳はオバサンじゃなよ、オバサンってのは、自分でオバサンだと思った時点でオバサンなんだよ。
もしも、周りが貴女をオバサンだと見ていると感じるなら、それは自分で自分をそう見えるようにしているからなんだよ。
黒木瞳(48歳)も、川島なお美(48歳)も、飯島直子(40歳)も、杉本彩(40歳)も、全然オバサンじゃないよ!
素敵なお姉さまだよ!
それにひきかえ、言っちゃなんだけど、25歳でもオバサンに見える人はいるぞ!
(むしろオジサンに見えたり?)
34歳の相談者さん、オバサンかお姉さんかは、気の持ちよう、
そして生き方次第ですよ、ええ本当に。
スイマセン、ちょっと力説しちゃいました。
だって身につまされるから・・・(爆)
恋する詩神 77
― スロウレイン 5 ―
著:アキト
「そんで? 元気にやっとったんか? 」
蒼太が口の端を少し上げて見せる。
それは気を許した者だけに見せる表情だった。
圭は、今でも自分にその表情を見せてくれたことにほっとして、胸を撫で下ろした。
「なんやいろいろありますけど、元気でやっとりますよ。蒼太先輩はここで・・・?」
簡易ではあるが設置されている店のテント屋根を見て、圭は屋号を確認しようと顔を上げた。そこには青地に白の文字で『蒼海』とある。
「あおうみ? 」
「『そうかい』って読むんや。関西の方で去年オープンしたばっかりの和食屋でな。結構人気出てきてるんやで」
「へぇ、知りませんでした」
圭と話している間にも蒼太は訪れた出演者に休むことなく料理を手渡している。その慣れた手の動きを見つめていると、不意にその料理が自分に向かって差し出された。
「まあ、一回食べてみ? それより圭、なんやおまえの後ろの方からものすごい視線を感じるんやけど・・・ええんか?」
「え、あ、」
思わず手渡された料理を受け取り、振り向くと少し離れた場所に佇む旭がいた。
表情は穏やかだが圭だけに不機嫌オーラが見える。圭は自分で思っていた以上に蒼太と話し込んでいたことを瞬時にして後悔させられた。
(しもた〜!)
慌てて旭の元へ駆け寄る。
片手で受け取った料理を、そしてもう片方の手で旭の腕を掴むと有無を言わさず蒼太の元へ舞い戻った。
言い訳をするよりも先に、旭を蒼太に紹介した方が話が早い。
「ちょっと! 圭くん!」
「蒼太先輩! この人が俺の恋人です」
「は?」
唖然とする蒼太。そして自分の隣りで不機嫌だった旭の顔が突如として赤面しているのがわかる。
「け、圭くん、いきなり何言ってんの。」
「いや、その・・・紹介しとこ思て」
(何年も会ってなかった言うても蒼太先輩には俺のこと、知っててもらいたいし)
圭はそう思い、蒼太と旭の間に立った。
「旭くん、この人が俺の世話になった先輩で風祭蒼太さん。蒼太先輩、この人が俺の恋人の」
「倉橋旭、やろ? 知っとるで。テレビで見たことある」
蒼太は旭を見つめて口の端を少し上げた。
それは圭に対してのものに比べれば、なんだか意地悪そうな微笑みにも見える。そのことに違和感を感じた圭が口を開こうとした時、旭が圭の右腕を強く掴んだ。
(・・・旭くん?)
「俺も蒼太さんのことは存じてます。テレビで見ましたから」
「そら光栄やな。まぁテレビっちゅーてもきな臭い事件のニュースなんやろけど」
旭が掴んだ腕に痛さを感じる。
圭は訝しく思い、旭の表情を伺った。
笑顔を見せてはいるが、これは明らかに社交辞令。自分の本心を隠す時の旭の表情だ。
(もしかして待たせてる間になんかあったんか)
咄嗟に旭の前に入ろうとした時、蒼太が手にしていた料理を旭に差し出した。
「美味いから食べてみ。これからなぁ、ここの局に出前で出入りさせてもらえることになったんや。食べてみて気に入ったら、また注文してくれる? サービスしたるさかい」
すると旭はにっこりと蒼太に向かって笑顔を見せると小さく会釈して「ごめんなさい」と言った。
「もう時間がなくて。そろそろAスタジオに帰らないといけないんですよ。行こう、圭くん」
「え、もう?」
スタジオ内にある時計に目をやると確かに戻らないといけない時間ではあった。
司会者の「そろそろAスタジオにお戻り下さい」というアナウンスも聞こえ始めている。
「あ、ホンマや。残念やなぁ。じゃあまた出前でも頼んだってくれや」
アナウンスを聞いた蒼太が、圭が手にしていた料理と旭に差し出した料理を溜息混じりで店の奥に下げた。
「圭くん」
旭が掴んだままの圭の腕を半ば強引に引っ張ろうとする。
「あ、うん」
周囲の出演者たちも慌ただしくBスタジオから撤収し始めていた。
しかし、急に名残惜しさがこみ上げてきて、圭は店の片付けに手を付け始めた蒼太をそっと見やる。
その視線に気付いたのか、蒼太がふと顔を上げた。
「何してんねん、はよ戻らんか」
しっしっと追い払うように片手を振る蒼太を見て、圭は蒼太に背を向ける。
「ほな・・・行きましょか」
旭にそう言うと、圭は後ろ髪を引かれながらAスタジオへ向かった。
(これで会えなくなるわけやない。ここの局に出入りするって言うてたし、スタジオで撮影がある時に会えるかもしれへんやんか・・・)
「圭!」
旭に手を引かれBスタジオを出た時、圭は後方から呼び止められた。
振り返ろうとした瞬間、空いていた左手を掴まれ、耳元で囁かれる。
「奪いに来たで、圭」
目を見開いた先には、蒼太が口の端を上げて微笑んでいた。
一瞬、何が起こったのかわからず立ち尽くしていると、旭が急かすように繋いだ手を引いた。
「圭くん、早く」
「・・・は、はい」
佇んでいた蒼太が、圭を流し目で見つめながらBスタジオへ戻っていく。
足早にAスタジオへ向かう圭の左手の中には一枚の紙切れが残っていた。
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著:アキト
「そんで? 元気にやっとったんか? 」
蒼太が口の端を少し上げて見せる。
それは気を許した者だけに見せる表情だった。
圭は、今でも自分にその表情を見せてくれたことにほっとして、胸を撫で下ろした。
「なんやいろいろありますけど、元気でやっとりますよ。蒼太先輩はここで・・・?」
簡易ではあるが設置されている店のテント屋根を見て、圭は屋号を確認しようと顔を上げた。そこには青地に白の文字で『蒼海』とある。
「あおうみ? 」
「『そうかい』って読むんや。関西の方で去年オープンしたばっかりの和食屋でな。結構人気出てきてるんやで」
「へぇ、知りませんでした」
圭と話している間にも蒼太は訪れた出演者に休むことなく料理を手渡している。その慣れた手の動きを見つめていると、不意にその料理が自分に向かって差し出された。
「まあ、一回食べてみ? それより圭、なんやおまえの後ろの方からものすごい視線を感じるんやけど・・・ええんか?」
「え、あ、」
思わず手渡された料理を受け取り、振り向くと少し離れた場所に佇む旭がいた。
表情は穏やかだが圭だけに不機嫌オーラが見える。圭は自分で思っていた以上に蒼太と話し込んでいたことを瞬時にして後悔させられた。
(しもた〜!)
慌てて旭の元へ駆け寄る。
片手で受け取った料理を、そしてもう片方の手で旭の腕を掴むと有無を言わさず蒼太の元へ舞い戻った。
言い訳をするよりも先に、旭を蒼太に紹介した方が話が早い。
「ちょっと! 圭くん!」
「蒼太先輩! この人が俺の恋人です」
「は?」
唖然とする蒼太。そして自分の隣りで不機嫌だった旭の顔が突如として赤面しているのがわかる。
「け、圭くん、いきなり何言ってんの。」
「いや、その・・・紹介しとこ思て」
(何年も会ってなかった言うても蒼太先輩には俺のこと、知っててもらいたいし)
圭はそう思い、蒼太と旭の間に立った。
「旭くん、この人が俺の世話になった先輩で風祭蒼太さん。蒼太先輩、この人が俺の恋人の」
「倉橋旭、やろ? 知っとるで。テレビで見たことある」
蒼太は旭を見つめて口の端を少し上げた。
それは圭に対してのものに比べれば、なんだか意地悪そうな微笑みにも見える。そのことに違和感を感じた圭が口を開こうとした時、旭が圭の右腕を強く掴んだ。
(・・・旭くん?)
「俺も蒼太さんのことは存じてます。テレビで見ましたから」
「そら光栄やな。まぁテレビっちゅーてもきな臭い事件のニュースなんやろけど」
旭が掴んだ腕に痛さを感じる。
圭は訝しく思い、旭の表情を伺った。
笑顔を見せてはいるが、これは明らかに社交辞令。自分の本心を隠す時の旭の表情だ。
(もしかして待たせてる間になんかあったんか)
咄嗟に旭の前に入ろうとした時、蒼太が手にしていた料理を旭に差し出した。
「美味いから食べてみ。これからなぁ、ここの局に出前で出入りさせてもらえることになったんや。食べてみて気に入ったら、また注文してくれる? サービスしたるさかい」
すると旭はにっこりと蒼太に向かって笑顔を見せると小さく会釈して「ごめんなさい」と言った。
「もう時間がなくて。そろそろAスタジオに帰らないといけないんですよ。行こう、圭くん」
「え、もう?」
スタジオ内にある時計に目をやると確かに戻らないといけない時間ではあった。
司会者の「そろそろAスタジオにお戻り下さい」というアナウンスも聞こえ始めている。
「あ、ホンマや。残念やなぁ。じゃあまた出前でも頼んだってくれや」
アナウンスを聞いた蒼太が、圭が手にしていた料理と旭に差し出した料理を溜息混じりで店の奥に下げた。
「圭くん」
旭が掴んだままの圭の腕を半ば強引に引っ張ろうとする。
「あ、うん」
周囲の出演者たちも慌ただしくBスタジオから撤収し始めていた。
しかし、急に名残惜しさがこみ上げてきて、圭は店の片付けに手を付け始めた蒼太をそっと見やる。
その視線に気付いたのか、蒼太がふと顔を上げた。
「何してんねん、はよ戻らんか」
しっしっと追い払うように片手を振る蒼太を見て、圭は蒼太に背を向ける。
「ほな・・・行きましょか」
旭にそう言うと、圭は後ろ髪を引かれながらAスタジオへ向かった。
(これで会えなくなるわけやない。ここの局に出入りするって言うてたし、スタジオで撮影がある時に会えるかもしれへんやんか・・・)
「圭!」
旭に手を引かれBスタジオを出た時、圭は後方から呼び止められた。
振り返ろうとした瞬間、空いていた左手を掴まれ、耳元で囁かれる。
「奪いに来たで、圭」
目を見開いた先には、蒼太が口の端を上げて微笑んでいた。
一瞬、何が起こったのかわからず立ち尽くしていると、旭が急かすように繋いだ手を引いた。
「圭くん、早く」
「・・・は、はい」
佇んでいた蒼太が、圭を流し目で見つめながらBスタジオへ戻っていく。
足早にAスタジオへ向かう圭の左手の中には一枚の紙切れが残っていた。
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+咎人の恋+ 7
― 太陽の恋 4 ―
蓮と付き合い始めて半年くらいたった頃か、ようやく蓮がなぜ皆に敬遠されているのかを知った。
それは蓮と待ち合わせの場所へ行く途中、偶然見かけた男をつけたコトに始まっている。
初めて蓮の笑顔を見た日、それは自分以外の男に向けられていたモノだったのだが、その笑顔がとても可愛くて、次の日話かけずにいられなくなったのだ。
その時に、蓮と話していた男を町で見かけ、なんとなく、気になってしまって後をつけた。
そしてその男が、その町で恐れられるヤクザ者であり、しかもかなり顔役の男だと知った。
なぜ、そんな男と蓮が? 蓮が、騙されているのではないかと心配して、後を付回すうち、尾行は気付かれた。
当然のコトだろう、相手は百戦錬磨のヤクザ者だ、高校生の尾行など直ぐに知れる。
曲がり角で見失いかけ、慌てて走ると、角を曲がった直ぐのところで鋭い目をしたソイツは黙って待ち伏せていた。
そして咥え煙草を吹かし、煙をフウと吐き出して、おもむろに口をひらいた。
「誰だ? 誰かに頼まれたのか? え、鷲尾会と知っててつけてきたのか? どうなんだ小僧」
確かに、自分はその三十がらみの男からしてみれば小僧かもしれないが、それでも学校では誰も近寄らせない迫力と威圧感を持つ男として通っている。
まして蓮や由佳里に言わせれば、三十歳に見えるらしい、そう馬鹿にされたもんでもないだろう、と開き直って、薙はつけてきた理由を話し、その男に蓮との関係を聞いた。
すると、ソイツはいきなり表情を変え、手にしていた煙草を携帯灰皿で揉み消してから懐へ締まった。
「すいやせん、蓮坊ちゃんのご学友でしたか、コレはご無礼を…… 」
そう言って僅かに頭まで下げた。
「蓮坊ちゃん…… ? 」
その男は名を須崎賢と名乗った、そして須崎は、訝る薙の目をジッとみて、嬉しそうに話し出した。
「いや、私は嬉しいですよ、蓮坊ちゃんにこんな立派なご学友が出来たなんて、坊ちゃんのことを心配してわざわざつけてらしたんでしょう? 私のようなならず者相手に怯むことなく、それだけ坊ちゃんを思ってくれてるってこった、ありがとうございやす」
「あ、いえそんな…… 」
須崎は、いきなり下出に出られて拍子抜けしてしまっている薙に、目を細めて延々と蓮のコトを話した。
それによると、蓮は須崎の属する暴力団、鷲尾会の会長の一人息子で、そのせいで今まで友人らしい友人は一人もいなかったらしい。
蓮を心配してアトまでつけてきたのは薙が初めてだと言った。
「是非、これからも、蓮坊ちゃんと仲良くしてやってくだせえ、」
「あ、はい…… いえ、此方こそ…… 」
須崎があまり丁重に、頭を下げるので、薙もかえって恐縮してしまい、慌ててボサボサの髪を掻きながら頭を下げる。
……と、ペコリを下げた頭の上から蓮の声が降ってきた。
「何やってんだ、オメーはよ! 」
ついでにポクンと後頭部を叩かれた。
「蓮?! 」
「蓮坊ちゃん、」
「おかえりなさいやし、坊ちゃんのお友達がお見えだってんで、少し先にお話させていただきましたよ」
蓮は不機嫌そうに須崎を睨んでいる、だが須崎は余裕の笑みを浮かべながら蓮の頭を撫でた。
撫でられた蓮は決まり悪そうにその手を振り払った。
「坊ちゃんはよせっつったろ! 」
「二勝したら、と言ったはずですよ、坊ちゃん」
「……ふん、」
蓮は不機嫌そうなまま、薙に向かって顎をふった。
薙は言われるまま蓮についていく、その行く先は町外れの埠頭だった。
「聞いちまったんだな…… 」
海風に吹かれながら、蓮は不機嫌そうな表情のまま、薙を睨むようにして言った。
でも、それは怒っていると言うよりは、悲しんでいるように見えた。
「なんで言ってくれなかったんだよ、」
「…… 」
蓮は答えなかった。
「それでなんだな…… 俺はずっと不思議だった、俺と違って小綺麗で人好きしそうなご面相なのに、なんで避けられてるのか、それはこういう事だったんだな? 」
「…… 」
それでもなにも答えない蓮に薙は詰め寄った。
何故言ってくれなかったのか、言えば自分も他の皆と同じように蓮を避けるようになるとでも思ったのか、そうだというなら心外だ、薙は蓮に信じられていなかったコトへの怒りで身体が震えた。
「そうだとして、……お前はどうする? 俺といるとお前まで白い目で見られるかもしれない、離れるなら今のうちだぜ」
冷たい目でそう言った蓮の言葉にズキンときた。
お前はそんな目で俺を見た事は無かった、その冷たい目を、凍りついた瞳を、溶かしてやりたい、暖めてやりたい。
その時、初めて真剣にそう思った。
「蓮…… 」
「……薙? 」
身体が自然に動く。
スッと手を伸ばし、途惑った瞳の細い肩を抱き寄せる。
そして怯えた少女のようにうち震えた蓮の、まるで誘っているかのように濡れてピンク色をした唇に口づけをした。
「…… っ、」
目を閉じて微かに震えている蓮の唇は、甘かった…… 。
「…… 」
それはほんの数秒の事だったが、数ヶ月後には恋人と呼び、彼女だと認識することになる由佳里よりも先に、薙の唇は蓮に触れた。
そして薙はゆっくり唇を離し、肩を固く抱いたまま、その目を見つめキッパリと言ってやった。
「俺がそんな男だと思うのか? 俺はお前が好きだ、お前が何者でも、この先何があっても、それだけは絶対に変わらねえからな! 」
「…… 」
すると蓮は大げさに慄き、思いっきり胡散臭そうに離れてから真っ赤な顔で喚いた。
「やっ…… やっぱお前そっち系か?! そうなのか?! 」
そこで、そうくるか…… 薙も思いっきり脱力しながら怒鳴り返していた。
「違う! 今のは親愛の情ってヤツだ、分かれ、そんくれえ!! 」
「わかるか、そんなもん! 」
「違うからな、絶対違うからな!! 」
笑いながら、それでもなお疑わしそうにホントかよ、とブツブツ言ってる蓮を見ながら、薙は誤解されたままでもよかったかなと、ちょっとだけ思っていた。
ソレくらい、その時の蓮は可愛かった…… 。
「変わらねえよ、俺は…… 俺達はずっと親友だ、そうだろ蓮? 」
そう言った時、極自然にそうだなと答えた蓮が、なぜかとても小さく見えた冬だった。
続く。 戻る。
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それは蓮と待ち合わせの場所へ行く途中、偶然見かけた男をつけたコトに始まっている。
初めて蓮の笑顔を見た日、それは自分以外の男に向けられていたモノだったのだが、その笑顔がとても可愛くて、次の日話かけずにいられなくなったのだ。
その時に、蓮と話していた男を町で見かけ、なんとなく、気になってしまって後をつけた。
そしてその男が、その町で恐れられるヤクザ者であり、しかもかなり顔役の男だと知った。
なぜ、そんな男と蓮が? 蓮が、騙されているのではないかと心配して、後を付回すうち、尾行は気付かれた。
当然のコトだろう、相手は百戦錬磨のヤクザ者だ、高校生の尾行など直ぐに知れる。
曲がり角で見失いかけ、慌てて走ると、角を曲がった直ぐのところで鋭い目をしたソイツは黙って待ち伏せていた。
そして咥え煙草を吹かし、煙をフウと吐き出して、おもむろに口をひらいた。
「誰だ? 誰かに頼まれたのか? え、鷲尾会と知っててつけてきたのか? どうなんだ小僧」
確かに、自分はその三十がらみの男からしてみれば小僧かもしれないが、それでも学校では誰も近寄らせない迫力と威圧感を持つ男として通っている。
まして蓮や由佳里に言わせれば、三十歳に見えるらしい、そう馬鹿にされたもんでもないだろう、と開き直って、薙はつけてきた理由を話し、その男に蓮との関係を聞いた。
すると、ソイツはいきなり表情を変え、手にしていた煙草を携帯灰皿で揉み消してから懐へ締まった。
「すいやせん、蓮坊ちゃんのご学友でしたか、コレはご無礼を…… 」
そう言って僅かに頭まで下げた。
「蓮坊ちゃん…… ? 」
その男は名を須崎賢と名乗った、そして須崎は、訝る薙の目をジッとみて、嬉しそうに話し出した。
「いや、私は嬉しいですよ、蓮坊ちゃんにこんな立派なご学友が出来たなんて、坊ちゃんのことを心配してわざわざつけてらしたんでしょう? 私のようなならず者相手に怯むことなく、それだけ坊ちゃんを思ってくれてるってこった、ありがとうございやす」
「あ、いえそんな…… 」
須崎は、いきなり下出に出られて拍子抜けしてしまっている薙に、目を細めて延々と蓮のコトを話した。
それによると、蓮は須崎の属する暴力団、鷲尾会の会長の一人息子で、そのせいで今まで友人らしい友人は一人もいなかったらしい。
蓮を心配してアトまでつけてきたのは薙が初めてだと言った。
「是非、これからも、蓮坊ちゃんと仲良くしてやってくだせえ、」
「あ、はい…… いえ、此方こそ…… 」
須崎があまり丁重に、頭を下げるので、薙もかえって恐縮してしまい、慌ててボサボサの髪を掻きながら頭を下げる。
……と、ペコリを下げた頭の上から蓮の声が降ってきた。
「何やってんだ、オメーはよ! 」
ついでにポクンと後頭部を叩かれた。
「蓮?! 」
「蓮坊ちゃん、」
「おかえりなさいやし、坊ちゃんのお友達がお見えだってんで、少し先にお話させていただきましたよ」
蓮は不機嫌そうに須崎を睨んでいる、だが須崎は余裕の笑みを浮かべながら蓮の頭を撫でた。
撫でられた蓮は決まり悪そうにその手を振り払った。
「坊ちゃんはよせっつったろ! 」
「二勝したら、と言ったはずですよ、坊ちゃん」
「……ふん、」
蓮は不機嫌そうなまま、薙に向かって顎をふった。
薙は言われるまま蓮についていく、その行く先は町外れの埠頭だった。
「聞いちまったんだな…… 」
海風に吹かれながら、蓮は不機嫌そうな表情のまま、薙を睨むようにして言った。
でも、それは怒っていると言うよりは、悲しんでいるように見えた。
「なんで言ってくれなかったんだよ、」
「…… 」
蓮は答えなかった。
「それでなんだな…… 俺はずっと不思議だった、俺と違って小綺麗で人好きしそうなご面相なのに、なんで避けられてるのか、それはこういう事だったんだな? 」
「…… 」
それでもなにも答えない蓮に薙は詰め寄った。
何故言ってくれなかったのか、言えば自分も他の皆と同じように蓮を避けるようになるとでも思ったのか、そうだというなら心外だ、薙は蓮に信じられていなかったコトへの怒りで身体が震えた。
「そうだとして、……お前はどうする? 俺といるとお前まで白い目で見られるかもしれない、離れるなら今のうちだぜ」
冷たい目でそう言った蓮の言葉にズキンときた。
お前はそんな目で俺を見た事は無かった、その冷たい目を、凍りついた瞳を、溶かしてやりたい、暖めてやりたい。
その時、初めて真剣にそう思った。
「蓮…… 」
「……薙? 」
身体が自然に動く。
スッと手を伸ばし、途惑った瞳の細い肩を抱き寄せる。
そして怯えた少女のようにうち震えた蓮の、まるで誘っているかのように濡れてピンク色をした唇に口づけをした。
「…… っ、」
目を閉じて微かに震えている蓮の唇は、甘かった…… 。
「…… 」
それはほんの数秒の事だったが、数ヶ月後には恋人と呼び、彼女だと認識することになる由佳里よりも先に、薙の唇は蓮に触れた。
そして薙はゆっくり唇を離し、肩を固く抱いたまま、その目を見つめキッパリと言ってやった。
「俺がそんな男だと思うのか? 俺はお前が好きだ、お前が何者でも、この先何があっても、それだけは絶対に変わらねえからな! 」
「…… 」
すると蓮は大げさに慄き、思いっきり胡散臭そうに離れてから真っ赤な顔で喚いた。
「やっ…… やっぱお前そっち系か?! そうなのか?! 」
そこで、そうくるか…… 薙も思いっきり脱力しながら怒鳴り返していた。
「違う! 今のは親愛の情ってヤツだ、分かれ、そんくれえ!! 」
「わかるか、そんなもん! 」
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ソレくらい、その時の蓮は可愛かった…… 。
「変わらねえよ、俺は…… 俺達はずっと親友だ、そうだろ蓮? 」
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恋する詩神 76
― スロウレイン 4 ―
著:葉邑桐也
よくドラマで見るようなラーメン屋か、あまり上品ではない店の板前のような格好をした蒼太は、呆然と呟いた圭を、暫く眩しそうに見つめ、おもむろにニカッと笑った。
「なんでて、そらココのモンに呼ばれたからやろ、なんや是非につっとったで来てやったんやないか、お前こそ、なにしとるんや、えらいチャラいカッコしよってからに」
そして六年ぶりに会ったハズの蒼太は、まるで昨日も会っていたかのような自然な流れでそう答えた。
「チャラいて、お、俺は出演者ですよ、って…… そうやなくて! あの…… 死んだんやなかったんですか…… ? 」
たしか、ニュースで見た筈だ、蒼太が、あの懐かしいトタン屋根のアパートに立て篭もり、そして自殺を図ったと…… まさかあれが夢だったというワケではないだろう?
驚き過ぎて上手く言葉が出せずに、呆然と聞き返す圭を心外そうにジロリと睨んだ蒼太は、チョイチョイと指先で圭を招いた。
「はい? 」
つい、条件反射のように返事をして近づく ……と、その途端に圭の広い額へ強烈なデコピンが飛んだ。
「阿呆、死人がココにおるかい! 幽霊やないで、足はあるわい! 」
「そらわかっとりますよ! てか痛いやないですか! 」
だいたい死人はデコピンなどしないだろうし、生きてそこにいるのはわかっている、だが言いたくもなるではないか。
でも、目の前にいるのは確かに昔のままの蒼太だった。
胸の奥から込み上げる、甘く疼く感情に流されて、圭は何をしにその場へ行ったのかも忘れ、生きて動いている蒼太の姿に見惚れていた。
――――――――
「アッキラさん! 」
突然背中を叩かれて驚いた旭が振り向くと、ソコには圭の事務所の後輩、柴田翔がいた。
手にソーダ水を持ちながらニッコリ笑ってくっついてくる。
「僕、今度夕方のバラエティのレギュラーに入ったんですよ、」
「ああ、そうみたいだね、さっき紹介されてたの聞いたよ、凄いね、これでレギュラー四本だって? 」
「ええでも自慢にはなんないですよ、なんか小さな仕事ばっかりで、なかなか圭くんに追いつけないなあって…… 」
「何言ってんの、翔くんだって頑張ってるじゃない、デビュー一年目でレギュラー四本って凄いコトでしょ? 」
「ありがとうございま〜す! 旭さんにそう言われるとなんか元気が出ちゃいますよねー、ね、一緒に食べませんか? あっちにカクテル出してる店とか、ありますよ、」
「え、本当? 」
酒があると聞くとついフラフラとついていきたくなるが、圭との約束があるので、そうもいかない。
旭は少し残念そうに笑いながら遠慮した。
翔は、圭と違って芸能界でトップにのし上がるコトを目標に、利用できるモノは何でも利用する逞しい少年だ。
媚びておきたいのは旭ひとりでは無いらしい。
直ぐに、それは残念ですね、じゃあまた今度、飲みにでも連れてってくださいねと手を振って次の目標人物へと去っていった。
「圭くん、遅いなあ…… 」
旭は翔の後姿が見えなくなってから、フウと溜息を漏らして辺りを見回していた。
普段仕事以外は家に篭りきりで、ある程度見知った特定の人としか付き合うことがない旭は、その場にいるのが苦しくなってきていたのだ。
知っている人が近くにいない、人が多すぎて…… 人いきれで落ち着かない。
正直、苦手なタイプの翔に話しかけられて、その不安感は増していた。
キョロキョロと圭の歩いていったハズの方向を見ては、圭の姿を探す。
すると、少し離れた和食系の店の前で立っている圭を見つけた。
誰かに挨拶にいくと言っていたが、今話しているのはどう見ても芸能人ではなく、店の店員のように見える。
もう挨拶とやらはすんだのだろうか?
視力にあまり自信のなかった旭は、そっと近づいていった。
「…… 」
そして旭は、近づくにつれ、その板前風の男が、自分も見たことがある人間であるコトに気付いた。
直に会ったコトは一度もない。
ただ前に一度、昔の先輩だと圭から話しを聞いたコトがあっただけの人だ。
中学時代までは背が思うように延びず、小学生なみだったので、このままずっとチビだったらどうしようかと本気で心配していたと笑いながら話した圭は、懐かしそうにその先輩の話をしてくれた。
と言っても、昔世話になった先輩だと言っただけで、別に特別なエピソードや詳しい話を聞いたワケではないのだが、圭がその先輩を好きだったのだろうなという事は、充分にわかった。
それが、少年期にありがちな、大好きな先輩に対する憧れか、それとも恋かというコトまではわからなかったが、圭が憧憬をよせている事だけは理解できた。
だから、仕事の合間、偶然ニュースで「風祭蒼太」という名前を聞いて、写真を見たワケでもないのに、なんとなく確信を持ったのだ。
あの、蒼太さんだ。
圭が憧れ、慕いつづけていた蒼太さんだと。
その時、容疑者としてチラッと公開された蒼太の写真で、初めて顔を知った。
粋なリーゼント姿の、いかにも気風の良さそうな快活そうな男に見えた。
自分とは全然違うその風貌に、ほんの少し嫉妬した事を覚えている。
それは、旭もそうなりたいと願った姿に似ていたからでもあった。
蒼太が事件を起こしたその時、旭は別の仕事中で、圭のそばにいてやる事が出来ず、でも心配で、携帯に電話を入れたのだ。
長い呼び出し音のあと携帯にでた圭は、案の定暗く沈んだ声をしていた。
そして、もしも自分がずっとついていれば、蒼太先輩はこんなコトにならなかったんじゃないか、最後までついていけなかった自分が悪いのではないかとと落ち込む圭に、旭はそんなことはないよと励ましたのだ。
「だって蒼太さんは圭くんの好きになった人でしょ? 信じて、蒼太さんは圭くんの幸せを望んでると思うよ、そういう人だよ」
「そうやろか…… ホンマにそう思いますか? 」
「うん、思うよ」
「旭くん…… 」
あの時、圭は蒼太のコトについて、好きな人だという事を否定しなかった、つまり本当にそうだったのだろう。
その「好き」と言うのが、ただの憧憬か恋かはわからなかったが、そういうコトなのだ。
そして今目の前には、ウットリとした熱っぽい視線で蒼太を見つめ、はにかんで話している圭と、そんな圭を同じく楽しそうに、時々悪戯っぽく笑いながら何かからかうような表情で話しかける蒼太がいる。
何を話しているんだろう?
旭は気がかりでならなかったが、どうしてもそれ以上歩みが進まず、遠くから親しそうに話している二人を見ているだけしか出来なかった。
NEXT. BACK.
↓気に入っていただけましたらぜひ押してやってください。

著:葉邑桐也
よくドラマで見るようなラーメン屋か、あまり上品ではない店の板前のような格好をした蒼太は、呆然と呟いた圭を、暫く眩しそうに見つめ、おもむろにニカッと笑った。
「なんでて、そらココのモンに呼ばれたからやろ、なんや是非につっとったで来てやったんやないか、お前こそ、なにしとるんや、えらいチャラいカッコしよってからに」
そして六年ぶりに会ったハズの蒼太は、まるで昨日も会っていたかのような自然な流れでそう答えた。
「チャラいて、お、俺は出演者ですよ、って…… そうやなくて! あの…… 死んだんやなかったんですか…… ? 」
たしか、ニュースで見た筈だ、蒼太が、あの懐かしいトタン屋根のアパートに立て篭もり、そして自殺を図ったと…… まさかあれが夢だったというワケではないだろう?
驚き過ぎて上手く言葉が出せずに、呆然と聞き返す圭を心外そうにジロリと睨んだ蒼太は、チョイチョイと指先で圭を招いた。
「はい? 」
つい、条件反射のように返事をして近づく ……と、その途端に圭の広い額へ強烈なデコピンが飛んだ。
「阿呆、死人がココにおるかい! 幽霊やないで、足はあるわい! 」
「そらわかっとりますよ! てか痛いやないですか! 」
だいたい死人はデコピンなどしないだろうし、生きてそこにいるのはわかっている、だが言いたくもなるではないか。
でも、目の前にいるのは確かに昔のままの蒼太だった。
胸の奥から込み上げる、甘く疼く感情に流されて、圭は何をしにその場へ行ったのかも忘れ、生きて動いている蒼太の姿に見惚れていた。
――――――――
「アッキラさん! 」
突然背中を叩かれて驚いた旭が振り向くと、ソコには圭の事務所の後輩、柴田翔がいた。
手にソーダ水を持ちながらニッコリ笑ってくっついてくる。
「僕、今度夕方のバラエティのレギュラーに入ったんですよ、」
「ああ、そうみたいだね、さっき紹介されてたの聞いたよ、凄いね、これでレギュラー四本だって? 」
「ええでも自慢にはなんないですよ、なんか小さな仕事ばっかりで、なかなか圭くんに追いつけないなあって…… 」
「何言ってんの、翔くんだって頑張ってるじゃない、デビュー一年目でレギュラー四本って凄いコトでしょ? 」
「ありがとうございま〜す! 旭さんにそう言われるとなんか元気が出ちゃいますよねー、ね、一緒に食べませんか? あっちにカクテル出してる店とか、ありますよ、」
「え、本当? 」
酒があると聞くとついフラフラとついていきたくなるが、圭との約束があるので、そうもいかない。
旭は少し残念そうに笑いながら遠慮した。
翔は、圭と違って芸能界でトップにのし上がるコトを目標に、利用できるモノは何でも利用する逞しい少年だ。
媚びておきたいのは旭ひとりでは無いらしい。
直ぐに、それは残念ですね、じゃあまた今度、飲みにでも連れてってくださいねと手を振って次の目標人物へと去っていった。
「圭くん、遅いなあ…… 」
旭は翔の後姿が見えなくなってから、フウと溜息を漏らして辺りを見回していた。
普段仕事以外は家に篭りきりで、ある程度見知った特定の人としか付き合うことがない旭は、その場にいるのが苦しくなってきていたのだ。
知っている人が近くにいない、人が多すぎて…… 人いきれで落ち着かない。
正直、苦手なタイプの翔に話しかけられて、その不安感は増していた。
キョロキョロと圭の歩いていったハズの方向を見ては、圭の姿を探す。
すると、少し離れた和食系の店の前で立っている圭を見つけた。
誰かに挨拶にいくと言っていたが、今話しているのはどう見ても芸能人ではなく、店の店員のように見える。
もう挨拶とやらはすんだのだろうか?
視力にあまり自信のなかった旭は、そっと近づいていった。
「…… 」
そして旭は、近づくにつれ、その板前風の男が、自分も見たことがある人間であるコトに気付いた。
直に会ったコトは一度もない。
ただ前に一度、昔の先輩だと圭から話しを聞いたコトがあっただけの人だ。
中学時代までは背が思うように延びず、小学生なみだったので、このままずっとチビだったらどうしようかと本気で心配していたと笑いながら話した圭は、懐かしそうにその先輩の話をしてくれた。
と言っても、昔世話になった先輩だと言っただけで、別に特別なエピソードや詳しい話を聞いたワケではないのだが、圭がその先輩を好きだったのだろうなという事は、充分にわかった。
それが、少年期にありがちな、大好きな先輩に対する憧れか、それとも恋かというコトまではわからなかったが、圭が憧憬をよせている事だけは理解できた。
だから、仕事の合間、偶然ニュースで「風祭蒼太」という名前を聞いて、写真を見たワケでもないのに、なんとなく確信を持ったのだ。
あの、蒼太さんだ。
圭が憧れ、慕いつづけていた蒼太さんだと。
その時、容疑者としてチラッと公開された蒼太の写真で、初めて顔を知った。
粋なリーゼント姿の、いかにも気風の良さそうな快活そうな男に見えた。
自分とは全然違うその風貌に、ほんの少し嫉妬した事を覚えている。
それは、旭もそうなりたいと願った姿に似ていたからでもあった。
蒼太が事件を起こしたその時、旭は別の仕事中で、圭のそばにいてやる事が出来ず、でも心配で、携帯に電話を入れたのだ。
長い呼び出し音のあと携帯にでた圭は、案の定暗く沈んだ声をしていた。
そして、もしも自分がずっとついていれば、蒼太先輩はこんなコトにならなかったんじゃないか、最後までついていけなかった自分が悪いのではないかとと落ち込む圭に、旭はそんなことはないよと励ましたのだ。
「だって蒼太さんは圭くんの好きになった人でしょ? 信じて、蒼太さんは圭くんの幸せを望んでると思うよ、そういう人だよ」
「そうやろか…… ホンマにそう思いますか? 」
「うん、思うよ」
「旭くん…… 」
あの時、圭は蒼太のコトについて、好きな人だという事を否定しなかった、つまり本当にそうだったのだろう。
その「好き」と言うのが、ただの憧憬か恋かはわからなかったが、そういうコトなのだ。
そして今目の前には、ウットリとした熱っぽい視線で蒼太を見つめ、はにかんで話している圭と、そんな圭を同じく楽しそうに、時々悪戯っぽく笑いながら何かからかうような表情で話しかける蒼太がいる。
何を話しているんだろう?
旭は気がかりでならなかったが、どうしてもそれ以上歩みが進まず、遠くから親しそうに話している二人を見ているだけしか出来なかった。
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